【京都市青少年科学センター】
ミネラルウォーター
ミネラルウォーターって?
ミネラルウォーターは,容器入飲料水のうち,地下水を原水とするものをいいます(図1と2)。特徴ある主な性質は,水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分によります。これらは,岩石の成分が溶け出したものです。
図1 フランスのミネラルウォーター例
(左:Volvic 軟水,右:Contrex 硬水)
図2 日本のミネラルウォーター(例)
(どちらも軟水)
硬度って?
硬度は,水に含まれるカルシウムとマグネシウムイオンの濃度を数字で表したものです。
※実際は,これらのミネラル成分を炭酸カルシウムに換算し,1l(リットル)の水に含まれるmg量で表します。これがアメリカ硬度で,ドイツ硬度などの違った表し方もあります。
表1のように,硬度が高い水を「硬水」,低い水を「軟水」,その間を「中硬水」または「中程度の軟水」と呼びます。
硬度(mg/l) | 0 ~ | 60 | ~ | 120 | ~ | 180 | ~ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
区分(※WHO基準) | 軟水 | 中程度の軟水 | 硬水 | 非常な硬水 |
ミネラルウォーターの成分表示例
図3のように硬度表示がある場合(この例では,軟水だとわかります)と,図4のように,個別のミネラル成分量だけの表示の場合があります。これは,硬度表示が義務付けられていないからです。しかし,図4の表示があれば,硬度を求めることができます。計算してみると,1560(mg/l)になり,「非常な硬水」であることがわかります。
図3 ミネラルウォーター(軟水)の表示例
図4 ミネラルウォーター(硬水)の表示例
硬度と地域
ヨーロッパのミネラルウォーターは,硬水が多くなっています。これは,アルプス山脈のようなカルシウムやマグネシウムを多く含む石灰岩地帯の湧水が多いことによります。一方,日本は,そういったミネラル成分の少ない火山地帯が広がり,湧水は軟水が多くなります。
「近くの石灰岩地帯」
京丹波町の質志には石灰岩地帯があり,鍾乳洞もあります。
琵琶湖北部の伊吹山,岐阜県の赤坂の金生山(図5)などは,石灰岩でできています。
図5 石灰岩(岐阜県金生山産)
ミネラルウォーターで紅茶を入れると?
硬水と軟水を使って紅茶をいれてみましょう(図6)。どのような違いがあるでしょうか?
図6 ミネラルウォーターでいれる紅茶
図7 左:軟水使用,右:硬水使用
硬水で入れると,黒っぽく濁った紅茶となり,美味しくありません。ヨーロッパ大陸では,アルプス山脈による硬度の高いミネラルウォーターが多く,より硬度の低いイギリスで紅茶が発達したのだと思います。
ミネラルウォータに石けん水を溶かすと?
石けん水(液体石けんを水で10倍程度に薄める)を用意し,硬水と軟水に滴下してみましょう。どのような違いがあるでしょうか?(図8)
図8 左:軟水使用,右:硬水使用
硬水に含まれるカルシウムやマグネシウム成分は,石けんの成分を結合させ,洗浄力を弱めます。ヨーロッパの硬水地帯では石けんが使いにくく,合成洗剤が普及しました。軟水が多い日本では,多くの地域で石けんが使えます。しかし,洗濯機の普及に合わせて,合成洗剤が一般化しています。
石けんは主な洗浄成分が脂肪酸ナトリウム(液体石けんは脂肪酸カリウム)で,合成洗剤は,それ以外の成分でできています。合成洗剤は,硬水地域でも使えます。
水の硬度と食習慣
硬水は,美味しい紅茶がいれにくのですが,灰汁(あく)を出す働きがあってシチューなどの煮込み料理に適しています。軟水は,昆布のうまみ成分であるグルタミン酸や,お茶の渋味成分であるタンニンを引き出すため,和風だしやお茶など,和風料理に適しています。また,軟水を使うとお米がやわらかく炊き上がります。このように,水の硬度は,地域の食習慣にも影響しています。