1.主題について
理科離れ・理科嫌いという言葉を耳にするようになって久しいが,本来,自然科学は不思議や驚き,おもしろさといった学ぶ魅力にあふれた世界である。教育課程実施状況調査の一環として行われた意識調査では,小学校高学年で約7割の子どもたちが,「理科の勉強は好きだ」と回答している。これは他の教科に比べてかなり高い割合であり,基本的に子どもたちは理科が大好きだといえる。生物とのふれあいや自分の考えを実験で確かめる活動は,子どもにとっておもしろいものである。
そこで,本研究会のテーマを,いわゆる学校教育の教科としての「理科」という枠組みからさらに広げて,自然科学の魅力や真理を追究することのおもしろさを子どもたちに伝えたいという思いから「科学の好きな子どもを育てる」という研究テーマを設定した。
「科学の好きな子」とは,もちろん,自然の事物や現象に強い関心を持ち,関わりを持とうとする好奇心の強い子である。その上に,自然事象に隠された真実を解き明かそうとする科学的思考を伴った探求を楽しむ子でもある。自分の見つけた問題に対して,自分なりの仮説を立てて検証していくことができる子である。科学の好きな子を育てるためには,知識だけではなく,自然への関心や学ぶ意欲,思考力,判断力,表現力などをふくめた力の育成が必要である。知識を獲得するだけでなく,新しい見方や考え方を取り入れられる子,自分の成長を確かめることのできる喜びを知り,時には自分の考えを変えて自らを高めることのできる子こそ,本当に科学の好きな子だと考えている。
体験や実証を伴わない知識を詰め込むだけの授業では,自然科学の楽しさを伝えることができるはずもない。まずは,自然事象のおもしろさを実感できる出会いを設け,自然科学の魅力を伝えることから始めねばならない。
2.サブテーマについて
サブテーマは,「自然に働き掛け,ともに学び合う授業の創造」とした。この「自然に働き掛ける」とは,単元の導入で自然事象のおもしろさに惹かれ,楽しく活動することだけを示しているものではない。自然の事物や現象の中に,不思議や疑問を抱き,目的意識を持って自然に働き掛ける姿を期待している。さらに,自分が見つけた問題に対して見通しを持って働き掛け,科学的な手法を用いて実験や観察をねばり強く取り組む姿をめざしている。そのためには,自然事象とに出会わせ方や支援のあり方,単元計画の工夫や評価について,これまでの成果をもとに研究を深めたいと考えている。
「ともに学び合う授業」というのは,単に話し合い活動を示すものではない。理科の授業に置いて,子どもたち相互の関わり合いも学習活動の大切な要素である。一人一人の疑問や発見をもとに全体の学習問題にまとめるときや,自分の考えをもちにくいときに,グループ内での交流はとても重要な情報となる。小グループでは,自分の予想や見通しを友だちに伝えやすく,友だちと考えを共有しやすくなる。また,仲間と協力することによって,実験や観察がより充実することできる。意図的に交流の場を設定し,考えを深め自らを高めることのできる子を育てたいと考えている。
3.今年度の方向性
これまでの取組の成果として,導入場面で自然事象との出会わせ方を工夫することにより,単元全体にかかわる問題づくりにつなげることができ,子どもたちの意欲的な学習を継続させることができた。追究場面では,見通しのもたせ方,支援の仕方について研究をすすめ,子どもたちの思いを適切に把握することによって,子どもたちが実感する活動の場を持つことができた。さらに,昨年度は子どもたち相互の高まりをねらいとした交流の場を設け,個の学びをさらに深化させ,確かなものにすることをめざしたきた。
また,個に応じた指導を充実すべく,単元計画に補充的・発展的学習を位置づけて研究をすすめてきた。補充的・発展的学習については,多様な個性や能力を持っている児童に対して,その課題を明らかにし,個に応じた指導の一つの形として取り組みたい。補充的な学習では,学習内容の習得状況を確認し,日常事項と関連させたり,類似した現象の観察や実験を行ったりして,基礎的基本的な内容の確実に定着させていく。発展的な学習では,子どもが自分の明確な目的を持った主体的で,意欲的な観察・実験を行い,より高いレベルの思考力,判断力,表現力などを育成していく。従って,いずれも決してやらされる学習ではなく,一人一人が課題に関心・意欲を持って取り組むような活動をめざしている。
今年度はこれまでの取組に基づいて次の3点に重点を置き,さらに研究を深めたいと考えている。
@実感できる活動の手だて
A共に学びあう学習の場での手だて
B個に応じた指導としての補充的・発展的な学習の場での手だて
この研究を通して,子どもたち一人一人が生き生きと活動し,自然科学への興味・関心を高め,「科学の好きな子ども」の育成につなげていきたいと考えている。そして,11月11日に予定している京都市立常磐野小学校での研究発表で,その成果を発表していきたい。
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