21世紀の『理科』を考える京都市民会議>諮問文


「21世紀の『理科』を考える京都市民会議」
諮問文および諮問理由

21世紀の「理科」を考える京都市民会議 様

京都市長  桝本 ョ兼

次の事項について,理由を添えて諮問します。
  新しい時代にふさわしい「理科・科学」のあり方について
   ○「理科好きな子ども」の育成について
   ○生涯学習としての「理科・科学」の振興について

(理由)
今日,科学は,急速な進歩を続けており,日常の生活において,あふれんばかりの科学技術製品を使用し利便性を享受している一方,我が国の成人の科学技術に対する関心の度合いは,OECD加盟諸国中で最低位に位置しております。さらに,児童・生徒の科学や理科に関する成績は,高位の水準を維持しているにもかかわらず,教科等についての関心の度合いは,成人の場合と同様に,国際的にかなり低い数値を示しております。
こうした「理科離れ・理科嫌い」の傾向を是正し,自然に親しみ自然のものの成り立ちを理解するとともに,環境問題なども含めた科学についての正確な理解力や判断力を身につけることが,学校だけではなく,家庭での教育や生涯学習においても,今日的な重要な課題になっております。
本市には,市民ぐるみで子どもを育む地域特性や風土,ノーベル賞受賞者をはじめ多数の世界的科学者を輩出してきた伝統,「大学のまち」と言われる学術的基盤,さらには,ベンチャー企業から出発し最先端技術の分野で世界をリードする企業群,数多くの研究機関・博物館,産・学・公の連携による知的クラスター創生,大都市としてはまれな恵まれた自然環境など,他の都市には見ることのできない恵まれた特性が多く存在しております。
こうした京都の特性を生かし,新しい時代を担っていく「理科好きな子ども」の育成や,大人が「理科・科学」への関心を持つことによって,学校,家庭,地域が一体となった生涯学習としての「理科・科学」の振興を図る方策を諮問するものであります。

(諮問理由説明)
京都市では,「安らぎのあるくらし」と「華やぎのあるまち」を目指す「京都市基本構想」を具体化する「京都市基本計画」を策定し,京都のまちの特性を生かしながら,新しい時代に積極果敢に挑戦していくための取組を進めております。
具体的には,「ものづくり」の観点から活力あふれるまちを実現するために,「京都市スーパーテクノシティ構想」や「京都バイオシティ構想」を策定し,産・学・公の連携促進を図るとともに,地球温暖化防止に向けた「京エコロジーセンター」の設立などを市民とのパートナーシップの下に進めております。
さて今日,世界の科学技術の現状をみますと,バイオテクノロジーなどの科学技術・コンピュータや携帯電話に代表される情報通信技術等は,ますます急速な進歩を続けておりますが,現実に日常生活において,あふれんばかりの科学技術製品を使用し,利便性を享受しているのにもかかわらず,我が国の成人の科学技術に対する関心の度合いは,OECD加盟諸国中で最低位に位置しております。さらに,児童・生徒の科学や理科に関する成績は,従来どおり高位の水準を維持しているにもかかわらず,これらの教科や分野についての関心の度合いは,成人の場合と同様に,国際的にはかなり低い数値を示しております。
こうした「理科離れ・理科嫌い」の傾向を是正し,自ら課題に取り組む姿勢を育むことが,学校だけではなく,家庭での教育や生涯学習においても,今日的な重要な課題になっております。このため,日々新たな革新が行われている科学技術の分野に関しましては,市民一人一人が科学技術を単に生活の利便性の面からだけでなく,自然に親しみ,自然のものの成り立ちを理解するとともに,環境問題なども含めた科学についての正確な理解力や判断力を身につけることが求められ,家庭・地域での課題としての取組が必要になってきております。
本市においては,理科教育を振興するため,昭和26年の「科学教室」の設置に始まり,昭和44年には,全国に先駆けて青少年科学センターを創設いたしました。この科学センターにおいて,国内外から高く評価されている「センター学習」を実施することにより,児童・生徒が科学の不思議さを理解するとともに,真理追究への真摯な取組から知識を体得することを目指しております。このような取組は,児童・生徒に単なる知識の理解だけでは得られない体験や経験に基づく理解力を結実させ,ひいては「生きる力」の育成に通じるものがあると確信しております。
さらに,本市の小学校・中学校においても,「総合的な学習の時間」を活用した観察学習や栽培・飼育等を通じた体験学習,ビオトープやグリーンベルト,学校周辺の自然を利用した理科教育などを積極的に進めるほか,高校改革の具体的な取組として,より高度な科学分野の学習を目指した市立堀川高校における「自然探究科」の設置や同校の文部科学省による「スーパーサイエンスハイスクール校」の指定など,先進的な取組を進めております。
加えて,自然と接する機会の重要性を認識し,三重県に野外教育センター奥志摩みさきの家を,また,左京区花背に野外活動施設花背山の家を開設して,自然とのふれあいや体験活動等を教育活動の一環に取り入れて一定の成果をあげてまいりました。さらに,動物園を設置し,子どもたちに動物の生態を通して自然科学の学習や情操教育の向上を図ってまいりました。
しかしながら,全国的な「理科離れ」・「理科嫌い」の傾向は,「科学技術創造立国」を目指す我が国の基盤を揺るがせかねない重大な問題であり,市民の理科・科学に対する理解を深めるための施策をさらに進めていく必要があると考えております。
幸いにも,京都には,学制発布に先立つ明治2年に,町衆自らが我が国ではじめての小学校を創設・運営した歴史をもち,産業振興の面でも琵琶湖疏水を利用した水力発電や電気軌道車の導入を図るなど,単に伝統を重んじるだけでなく,新たなものを積極果敢に取り込んでいった進取の気風が脈々と流れております。こうした先人による改革は,新しい京都を創造し,世界に京都の文化を発信しうる人材の発掘やその育成に大きな期待をかけた改革でもありました。
このような京都ならではの,市民ぐるみで子どもを育む地域特性や風土,ノーベル賞受賞者をはじめ多数の世界的科学者を輩出してきた伝統,「大学のまち」と言われる学術的基盤,37もの大学を有機的に結合した大学コンソーシアム京都の設置,さらには,ベンチャー企業から出発し最先端技術の分野で世界をリードする企業群,総合地球環境学研究所や京都高度技術研究所等の多くの研究機関,数多くの博物館,産・学・公の連携による知的クラスター創生など,他の都市には見ることのできない恵まれた特性が多く存在しております。
21世紀は,知識や情報が社会を動かす「知識社会」になるといわれている中で,こうした京都特有の有利な特性を生かし,山紫水明とうたわれ,大都市としてはまれな「鮎」が泳ぐ河川を有するなど恵まれた自然環境を保持していくとともに,伝統工芸や芸術文化を生かしつつ新分野での創造性を発展させていかなければなりません。そのために,新しい時代を担っていく,具体的に行動で示すことができる「理科好きな子ども」の育成や,大人が「理科・科学」への関心を持つことによって,学校,家庭,地域が一体となった生涯学習としての「理科・科学」の振興を図っていかなければならないと考えております。
以上が,諮問をお願いする理由であります。