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【京都市青少年科学センター】

腸の長さをくらべてみよう

① 腸ってなに?

 口から食べた食べ物はお腹の中に入ったらどこに行くのでしょうか。 お腹の中には消化管という食べ物が通る1本の長い管があります。 食べ物は口から食道,胃,腸の順に運ばれます。食べ物の中にある養分はそのままの形ではわたしたちのからだの中で利用ができません。 そこで,食べ物の養分をからだで使いやすい形に変えてから取り込むことが必要です。これを消化と吸収といいます。腸は消化と吸収の役割をもつ重要な器官です。

② 哺乳動物の腸の長さをくらべてみよう。

 いろいろな哺乳動物の腸の長さをくらべてみましょう。図1にヒト(体長1.5 m)を基準にしたからだの大きさ(体長),表1にそれぞれの腸の長さをまとめました。

図1 いろいろな哺乳動物のからだの大きさ





表 1 いろいろな哺乳動物の腸の長さ
動物 腸の長さ(m) 腸/体長 比
マッコウクジラ 300 16~24
ウマ 30 12
ウシ 50 22~29
ヒツジ 31 27
ヒト 7 4.5
ライオン 7 3.9
オオカミ 6 4
ネコ 2 3~4



 体長に差があるので,腸の長さだけに注目してくらべられません。
 そこで,腸は体長の何倍かを考えてみましょう。腸の長さ(m)を体長(m)で割った腸/体長比を求めるとわかりやすくなります。図2は腸/体長比をもとに腸の長さをくらべたものです。
 同じ哺乳動物でもこんなにも腸の長さが異なるとはおどろきです。

図2 腸/体長比をもとにした腸の長さくらべ

③ なぜ腸の長さがちがうのか?

 表1や図2を見ていると,体長に比べ腸が長いグループと短いグループに大きく分けることができます。腸の長さのちがいには食べるものが関係しています。 腸が長いグループは草など植物を食べる草食動物,短いグループは肉など他の生き物を食べる肉食動物です。わたしたちヒトは肉も草(野菜)も食べます。肉食動物が草も食べられるように進化した,肉食動物と草食動物のちょうど中間グループだといえます。 魚やプランクトンを食べるマッコウクジラはなぜ腸が長いのでしょうか。ふしぎですね。
 なぜ草食動物は腸が長いのかというと,草の中の養分は肉に比べて少ないので,養分を腸でとり残しがないように時間をかけて吸収しなければならないからです。 草食動物は腸の長さを長くするだけではなく,腸を含めた消化管のつくりを工夫したり,腸に住む菌など他の生き物の力をかりたりして,草からできるだけたくさんの養分を取り出しています。興味がある人はぜひ調べてみてください。







  参考文献

上野川修一,『体の中の下界 腸のふしぎ』,講談社,2013年
岩堀修明,『図解・内臓の進化』,講談社2014年




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