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【京都市青少年科学センター】

ナナフシ



図1 コノハムシ


図2 世界のナナフシのなかま

 ナナフシという昆虫をご存知でしょうか。英語でStick Insect(スティック・インセクト)と呼ばれる,棒のような形をしたユニークな虫です。漢字では「七節」と書き,「たくさんの体節がある虫」(七=たくさんの)という意味です。枝や葉にカモフラージュする擬態昆虫として有名で,おなじみのコノハムシ(図1)も,東南アジアに生息するナナフシのなかまです。世界のナナフシには大型になるなかまが多くいます(図2)。

 日本には18種のナナフシが知られ,よくみかけるのは,ナナフシモドキやエダナナフシで,体長10㎝ほどの翅がない種類です。ここで紹介するのは「ニホントビナナフシ」(図3)と「ヤスマツトビナナフシ」(図4)の2種で,体長5㎝ほどの,翅があるナナフシです。よく似た種に「シラキトビナナフシ」がいますが,より高標高に生息し,胸部の茶色の模様が目立ち区別できます。

 ニホントビナナフシは頭部の複眼から後方にかけて,黄色のラインが目立ちます。このラインの有無でヤスマツトビナナフシと区別できます。ニホントビナナフシの方がより低標高地に生息しているようですが,山地で両種が共生している地域は多くあります。



図3 ニホントビナナフシ


図4 ヤスマツトビナナフシ


図5 ニホントビナナフシの卵(左3個)と
ヤスマツトビナナフシの卵(右2個)

 分布は広く,ニホントビナナフシは茨城県以西の本州から南西諸島まで生息し,ヤスマツトビナナフシは青森県以西の本州から九州まで生息しています。分布から見ても,ヤスマツトビナナフシの方がより低温地域に適応しているようです。

 両種とも,シイ・カシ・ナラ類などのブナ科植物を含む森林を好み,バッタやカマキリのように脱皮を繰り返し大きくなる不完全変態を行う昆虫です(チョウやカブトムシは卵→蛹→成体と成長する完全変態)。成虫には翅がありますが,チョウやトンボのように自由に飛び回ることはできず,落下するときに広げる程度です。7月頃から成虫になり始め,12月のかなり寒くなるころまで見ることができます。紅葉が終わり,葉が散り始めた林内を歩くと,寒さで下草に落ちてきたトビナナフシによく出会います。

 その生態はユニークで,危険を感じると前脚をピンとのばし枝や葉に同化しています。ユラユラと揺れながら歩く様は,風に揺れる枝や葉を演じていると言われています。繁殖方法は,本州では両種とも単為生殖を行っています。単為生殖とは雌だけでなかまを増やす方法で,ナナフシのなかまは単為生殖をする種や個体群が多く,先に上げたナナフシモドキやエダナナフシも発見すると雌であることが多いです。その理由は分かっていませんが,単為生殖をすることが,飛翔能力がなく,行動範囲が狭いナナフシにとって好都合なのかもしれません。それは,捕食されることや雄の交尾を成功させることのリスクを考えた時,より短い時間で多くのなかまを増やす(自分の遺伝子を残す)よい方法だと言えるのでしょう。卵の形も特徴があり(図5),蓋つきの壺のような形をしています。模様も網の目状になっていて,双眼実体顕微鏡でみるとエキゾチックな感じがします。



 2011年11月中旬,岡山県と鳥取県の山地で3頭のトビナナフシを採集しました。科学センターに持ち帰り,飼育してみると2種類を採集していたことに気付きました。岡山県で採集した1頭はすぐに死亡したので標本にしましたが,展翅すると後翅のピンク色が美しく感動しました(図6)。この個体はニホントビナナフシでヤスマツトビナナフシのそれよりも赤みが強い感じがします。残りの2頭は,科学センター屋外園でとったナラガシワの葉を,おいしそうにガツガツ食べて,飼育箱で元気にしています(図7)。そしてなんと,採集してきたその日から,糞と一緒にバラバラと産卵しているのです。センター学習に訪れる子どもたちも,かわいい顔をしたトビナナフシ(図8)に興味しんしんです。


図6 ニホントビナナフシの後翅

図7 ニホントビナナフシがナラガシワの葉を食べる様子



図8 ヤスマツトビナナフシの頭部

参考文献

  • 宮武頼夫・加納康嗣,1992,セミ・バッタ,保育社
  • 安松京三・朝比奈正二郎・石原保,1965,原色昆虫大図鑑Ⅲ,北隆館

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