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【京都市青少年科学センター】

標本のススメ

 野山に出かけて,美しいチョウなどの昆虫や花を見かけたとき,「これは何という名前だろうか。」と思ったことはありませんか。自然が作るものの形,色や模様などには,人間の技術ではまねのできないすばらしいものがたくさんあります。

 特に,はばたいているチョウや素速く飛び回るトンボなどの昆虫は,じっくりスケッチをするどころか,写真を撮ることさえ難しい場合もあります。そのようなときには採集し,手元でじっくり観察することになります。

 採集した昆虫を虫かごやプラスチックのケースなどに入れて持ち帰る人もいることでしょう。そのまま飼育してもよいのですが,中に入れた虫たちが暴れたり,食い合ったりしてしまうと,翅の端が破れたり,肢が取れたりして傷つくことも少なくありません。

 正しい種名や体のつくりを調べたり,オス・メスを見分けたりするときには,そういった細かい部分の特徴が手がかりになることがあります。たとえば,アゲハチョウのオス・メスは,後翅の一番前の模様で見分けます。このような部分は,自然な状態では隠れてしまって見にくくなってしまうことがあります。ですから,ケースなどの中で死んでしまうと,その見にくい状態のままで体が固まってしまい,無理に翅を広げて見ようとすると破れたり取れたりしてしまいます。

オス メス

 そこで,標本作りをおすすめします。まず,採集した昆虫は,翅や肢を傷つけないようにします。翅が大きいチョウやトンボは,三角紙に入れて持ち帰ります。甲虫やカメムシなどのなかまは,毒びんなどですぐに殺し,容器の中で暴れて傷つかないようにします。そして細部までよく見えるように,展翅・展足をします。



展翅のようす
展足のようす

 標本作りは生きものの命を奪います。しかし,そうすることによってより詳しく調べることができます。虫眼鏡や実体顕微鏡などで細部にわたって観察し,スケッチしたりすることで,見慣れた昆虫に秘められた不思議やふだん見逃している美しさを発見することができるでしょう。

 防虫や湿気に気をつけて保存すれば,一度作った標本をくり返し利用することができます。そうすることで無駄に命が失われることを防げます。また,その場所にどのような昆虫がいるかを正確に知ることによって,その場所の自然の豊かさをはかることもできます。

 採集によって絶滅した昆虫はいません。むしろ開発などで環境が大きく変化することにより,昆虫たちはいなくなってしまいます。貴重な自然環境を守るためには,その場所の様子をきちんと把握しておくことが大切なのです。標本作りは,命や環境を大切にする行為なのではないでしょうか。

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