〔奨励賞〕 養護学校 総合的な学習の時間

スクープ探検隊 

京都市立桃陽養護学校  東前 ふみ子
村井 はま子

1.学校の概要

 本校小学部の児童は,アレルギー性疾患(喘息,アトピー性皮膚炎)や肥満症などの慢性疾患の児童がほとんどである。最近は不登校傾向のある慢性疾患の児童や不登校を伴う心身症・神経症の児童の入院も増えてきている。病気のために遊びや生活経験が乏しく,人間関係を築くのが苦手で表現する力の弱い児童も多い。また,病気による気弱さから受け身になりがちな傾向もみられる。

2.取組の概要

1)学校の研究テーマ
 「自己の課題に気付き,向き合い,前向きに生きる児童生徒の育成」を学校の研究テーマとし,「総合的な学習の時間」と学校教育目標“めざす子ども像”との関わりを次のようにとらえて,取組をすすめることとした。
自己の課題に気付く。……………………………………からだを大切にする子
課題解決に向かって自主的に活動する。………………すすんで学ぶ子
やりきった成就感・満足感。……………………………願いを大切にする子
友だちと協力して活動する。……………………………思いやりのある子

2)本校小学部における研究
 本校小学部では,入院・入学してくる児童の実態を踏まえて,「自然とふれあい,働きかける中で,生き生きと活動する児童の育成」を目指して,昨年度から隣接する森を活用した「総合的な学習の時間」を「まなびの森タイム」として取り組んできた。本年度は,年間指導時数を35時間確保し児童を中心に様々な活動を展開し,その中で,「まなびの森」の「スクープ探検隊」として,課題別に児童を5グループに編成して学習を行った。

3.「まなびの森」

 本校に隣接した「まなびの森」は,大正時代,井山政之介氏所有の別荘の回遊式庭園として作られたものである。夏目漱石の日記に訪れたことが記されているが,どのような庭であったか詳細は明らかではない。昭和27年に京都市の「桃陽学園」が開設され児童生徒の良き散歩道として使われていたようである。手入れがされないまま雑木林化が進んだが,教職員やボランティアによる整備も進めながら,「タケノコ掘り」「春秋の野外炊事」「冬季におけるアスレチックの利用」などを行っている。
 さらに,昨年度より「総合的な学習の時間」の中で「まなびの森」を活用する取り組みも進め,森の生き物や植物などにも触れ,散歩や学習で森に入ったり,アスレチック遊具でもよく遊ぶなど,「まなびの森」と親しむ機会もより多くなってきている。

4.「まなびの森タイム」と情報教育

 「まなびの森」を活用することで,自然と触れ合いながら体を動かすことにより,自然の持つ優しさやさわやかさの中で心身を癒しながら学習を進めることができる。自然の中で学ぶことで喚起される児童の興味・関心・意欲を大切にしながら,「調べる」「記録する」「整理する」「整理して考える」「発表する」という学習の過程に情報機器を活用し,児童に学ぶことの楽しさを体験させることによって,さらに学習意欲を高めることができると考える。 情報機器も近年,操作も簡単になってきて扱いやすくなり,デジタルカメラでの記録やインターネットで調べたこともすぐに画面に出すことができるし,必要に応じて美しいカラー映像や文字で印刷もできるなど,即座に資料が手に入る。つまり,リアルタイムで活用が図れるなど学習にもスピーディーに対応できる。
 自分達で疑問に思うことや調べたいことを課題に,情報機器の特徴を生かして学習に活用することと,自然のよさ,森のよさを生かすことで「生きた学習」ができると考えた。

5.「まなびの森タイム」年間活動計画

6.スク−プ探検隊の取組[2学期]

 1学期は「まなびの森」に入り一人一人の創作活動に取り組んだので,2学期は森を歩き森の中で「面白いな」と思ったことをスク−プして,調べたり実験などをして,分かったことをまとめて,みんなに発表する“スク−プ探検隊”に取り組んだ。

A はっぱグループ B 虫グループ
C 役に立つ植物グループ D 歴史グループ
E 自然環境グループ

7.成果と課題  −情報教育にかかわって−

1)児童にかかわる成果について
  1. グループごとに課題や調べる目的などを決め,デジタルカメラを児童たち自身が利用できるように計画してからは,今まで以上に積極的に取り組むようになった。
  2. 普段は消極的な児童も,デジタルカメラでの記録は操作が比較的簡単で,筆記して記録するメモなどと違い,だれにでも記録ができるということで,積極的に取り組む姿勢がみられた。
  3. 記録したりした映像のデータなどを,いつでも自分でコンピュ−タで印刷できるなど,自分で処理できることで,活動が身近に感じられ一人一人のものにでき,個別の活動としても有意義なものになった。
  4. 「総合的な学習の時間」の「まなびの森タイム」で,情報機器を使用して「調べる活動」,「記録する活動」などを行うことで,児童たちは進んで学習を行うことができた。
2)指導者にかかわる成果ついて
  1. 児童の興味関心を大切にしながら,情報機器を調べる手段として個別の活動の要素も取り入れることで,「総合的な学習の時間」における「課題解決学習」の充実が図れた。
  2. デジタルカメラなどの機器を使うことで,児童一人一人の興味関心をさらに喚起し,活動する意欲も高めることができ,児童が積極的になり指導もはいりやすくなった。また,記録が残るので,一人一人の興味関心などや一人一人の具体的な活動を把握しやすい面もでてきた。
3)今後の課題−情報教育とのかかわりにおいて−
  1. 児童の学習意欲の高まりと共に,人数に応じたデジタルカメラ等の情報機器の整備や児童の実態に応じたものの整備などを今後目指していく必要がある。また,児童の活動意欲に応えられるような,教員の情報機器の取り扱いの力量を高めるための研修の積み重ねが必要である。
  2. 調べるための学習を支える環境を具体的検討してさらに整える必要がでてきた。
    • 情報機器の児童生徒数に応じた整備
      コンピュータ,プリンタ,デジタルカメラなど
    • 学習に関連した内容のCD-ROMの整備
      辞典・事典・辞書・種々の関連するCD-ROM
    • 学習に関連した図書・ビデオ・資料などの整備
    • ブックトラックなどでの関連図書の教室間異動や学級文庫への貸出など
    • 情報機器が利用しやすい環境−情報教育室の整備や教室へのコンピュータの設置
4)調べるための方法を児童自身に身に付けさせるため,指導する時間を充実させ,分かりやすいガイド的な内容の資料を作成していくなどの必要がある。
   ○インターネット,インタビュー,スクラップ,図書・新聞の読み方,電話など。

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