〔奨励賞〕 中学校育成学級 理科・技術

プレゼンテーションに挑戦!

〜 自由研究を発表しよう 〜

京都市立花山中学校 多那瀬 真穂

1.概要

 本校の育成学級在籍生徒は,比較的障害の程度が軽度で,コンピュータ学習にも意欲的に取り組める生徒たちである。ただし,自分を表現していくという点では消極的な面があるので,今夏,“PowerPoint”がコンピュータ室のすべてのパソコンに入ったのを機に,それを利用してプレゼンテーション作成に取り組み,自分の自由研究を文化祭の展示で発表することにした。各生徒,入級経緯や,発達段階の違いがあり,生徒によっては画像の処理など,“PowerPoint”以外のソフトも作成時に利用した。

2.本校育成学級生徒とコンピュータの関わりについて

 コンピュータが導入されて以来,育成学級の生徒も何らかの形でコンピュータ学習をしてきた。以前より,ハイパーキューブなどを起動した後,生徒にマウスの操作などを経験させることはできたが,コンピュータ室のパソコンがノート型になり,Windows95が使えるようになってからは,電源を入れるところから終了までを生徒自身でできるように指導しやすくなった。
 現在の在籍生徒は,3年男子3名,2年女子1名の計4名である。3年生のうち2名は,1年時より育成学級に在籍し,様々な教科で学習ソフトなどを利用したコンピュータを使った学習をしてきており,ローマ字入力,インターネットでの調べ学習などにも慣れている。昨年度末には,本校のホームページの「育成学級のページ」を分担して作成した。3年生1名は,3年時より育成学級に登校するようになった生徒で,3年で初めてパソコンにさわった生徒であるが,興味を持って取り組み,コンピュータ室に行くのを楽しみにしている。2年生1名は,コンピュータは大好きなのであるが,不登校傾向があり,残念ながら今回の学習には参加できなかった。昨年のホームページ作成では,女の子らしいかわいいページを作ることができたので,また,プレゼンテーション作成の機会も与えてみたい。
 コンピュータは現代社会ではあらゆる場面で利用されており,育成学級の生徒だからといって関わらずにすむものではなくなっている。少なくとも,「難しいからさわれない」といったイメージは払拭し,使えば便利なもの,楽しいものであるというイメージは抱かせたいと,各学習に取り組んできた。また,インターネットで情報を得るときや,ホームページを作成するときなどは,情報を早く手に入れ,また,発信できる便利さとともに,誰がいつどこで見るかわからないという,危険性についても触れ,自分で「発信してよい情報の範囲」などを考えさせた。

3.実践内容


@指導計画(全10H)
  • プレゼンテーションの説明と,例示(1H)
  • インターネットによる資料集め,デジタルカメラ等を利用した資料作成。(2〜4H)
  • スライド作成。アニメーションやサウンド,スライドショーの設定。(3〜5H)
  • スライドショーをお互いに批評,その後自分のスライドを改善。(2H)
A単元の目標
  • プレゼンテーションの効果を知り,作成する手法を学ぶ。
  • 自らの「研究」をプレゼンテーションで発表することにより,自己表現の喜びを知る。
  • (文化祭で発表することで,育成学級生徒のがんばりを他学級の生徒,教員に知ってもらう。また,授業研究会で発表することで,他校の育成学級の先生方に,育成学級におけるコンピュータ学習の一つの可能性を例示する。)(教員サイドの目標)
 教員はまず,プレゼンテーションについて説明し,テンプレートを利用すれば手軽にスライドができることを「目次」を作成して例示した。生徒達は,とりわけ,アニメーションやサウンドを設定してスライドショーができることに目を見張り,興味を持ったようであった。その後,各生徒が資料を集めたり,スライド作成に取りかかったりした。
 今回の授業では,それぞれの夏休みの「自由研究」を元に「プレゼンテーションを作成する」過程に取り組んだが,それぞれの実態から「自由研究」の部分も補う必要があった。3年生3名を,生徒A,B,Cとして紹介する。 
↑ 生徒Aの作品の一部。取り込んだ図表もダブルクリックでそれを作成したソフトが起動したので,修正もしやすいようであった。

 生徒A:近くを流れる川に石を拾いに行き,比較する文を書いてきたので,すぐにプレゼンテーションの作成に取りかかった。Aは,拾ってきた石をデジタルカメラで撮影し,画像処理ソフトを使ってトリミングなどをし,それをスライドに使用した。スライド中の表は,「一太郎」で作成し,それを取り込んだ。プレゼンテーション・ソフトの操作については,テンプレートを選ぶところからアニメーションの設定まで,すべて自分でこなした。

↑ 生徒Bの作品の一部。本で調べたことをそのままノートに写してきていたので,文章を短くまとめることに苦労していた。

 生徒B:本で,水泳について調べてきたが,もっと情報がほしいというので,インターネットでの調べ学習の時間を1時限与えた。後は,自分でこなしていったが,文が多かったため,入力後,まとめるのに時間がかかった。アニメーション・サウンドの設定を細かくしていたが,「人に見せる」視点から,後で修正をたくさん加えていた。

↑ 生徒Cの作品の一部。文字が写真の下に隠れてしまった部分もあるが,今回は追求しなかった。

 生徒C:育成学級に入級するまでは不登校であったため,「宿題」をする習慣が定着しておらず,夏休みの自由研究もできていない状態で2学期を迎えた。「葉について調べたかった」というので,インターネットから情報を得,画像を取り込む方法を指導し,それをスライドに利用した。まだローマ字入力が苦手なため,途中で仮名入力に切り替えたが,アニメーションの設定の方法などはすぐに覚えて楽しく取り組んでいた。今回は,内容についてはあまり追求せず,プレゼンテーションを仕上げることに主眼をおいた。

 3名ともPowerPointを利用し始めた時期には差があったが,早く一通り作成できた者は,アニメーションを変えてみたり,動くタイミングを設定しなおしたりと自分なりに工夫をしていた。今回は,「スライドショーの自動実行」を前提に作成したため,全員分ができてからは,お互いに「スライドショー」を見合い,タイミングなどについて「このタイミングでは全部読み切れない」「間延びする」など意見を出し合って,それを参考に改善した。

4.生徒の反応と変容および,その後の学習への応用

 教員の例示を見たときは,「難しそうだ」と感じたようであったが,PowerPointの基本的な使い方はすぐに覚え,背景(使用するテンプレート)などもテーマに合わせて選択し,適当なところで区切りながらスライドを作成していくことができた。特にはじめから興味を示していた「アニメーション・サウンドの設定」については,それをすることでとても「かっこよく」なると感じたようで,ツールバーから設定のウインドウを出すこともすぐにできるようになり,各素材にアニメーション・サウンド効果を設定していた。それをプレビューやスライドショーのリハーサルで見るたびに,「自分がこれを作っているのだ」という誇りと自信を感じているようで,繰り返しリハーサルを見ながらタイミングなどを直していた。最後にお互いに見合ったときは,批判をし合うというよりも,お互いががんばってきたものをよりよいものにしてみんなに発表しようという気持ちで,意見を出し合え,その後自分のスライドを改善するのにも,素直に人の意見を参考にしていた。
 文化祭では,教室でほかの美術などの作品を並べて展示するとともに,プロジェクタを用いてプレゼンテーションを自動実行で繰り返しスクリーンに映す形で発表した。他学級の生徒が,長い時間をかけてプレゼンテーションを熱心に見てくれる姿に喜び,たくさんの生徒や先生の感心の言葉を受け,とても自信を持ったようであった。
 他学級と合同の学年劇の取組で「音響・照明」を担当した生徒は,キャストなどをPowerPointを使ってスクリーンに映すことになったので,そのスライド作成は,中心になって進めることができた。
 この取組により,「自分の考えを積極的に表せる」までにはならないが,「自分の考えなどを表すことを促されたら,抵抗なく,表してみようとすることができる」ようにはなったように思われる。PowerPointのスライドショーは操作が簡単なわりには仕上がりが「見栄えがする」ので,育成学級の生徒が喜びと自信を持ってコンピュータ学習に取り組んでいくのに,よいソフトであったと思う。

5.今後の課題

 今回の取組は「プレゼンテーション作成」に重点を置いたため,その内容については十分に指導しきれず,表現などには間違いも含まれるままになっている。今回は,見せる範囲が限定されていたためそのままにしてしまっていたが,ネット上にのせたりする場合には,情報発信者として情報を厳選する指導などにも取り組んでいかなければならないと思う。
 育成学級は少人数であるため,コンピュータ学習に取り組みやすい利点はあるが,生徒は,学校や年度によって実態が全く違い,実態に合わせて使用するソフトや,どこまで自分で操作させるかなどを考えなければ,効果的にコンピュータ学習を進めることができない。そのため,使用できるソフトやノウハウをたくさん知っていれば,どんな生徒にも適切な学習を用意できるが,そうでなければ実態の異なる複数の生徒を一斉に指導することに踏み出しにくいと感じてしまうと思われる。また,今まで操作が簡単なソフトでは,できることも大したことがないものが多かった。今回使用したPowerPointは,テンプレートの使用により比較的簡単な操作で達成感を感じられる仕上がりが得られ,ほかのソフトの利用も組み入れやすいので,育成学級で使うのに向くソフトの一つであったと思うが,そのほかにも育成学級で学習しやすいソフトがたくさんあると思われる。それぞれの学校の育成学級で使用したソフトの紹介をし合う機会などをたくさん設け,頻繁な情報交換ができれば,育成学級でももっとコンピュータ学習に気軽に取り組めるようになると思う。一例に,本校育成学級において,ここ数年間で使用したソフトは以下の通りである。
  • 一太郎8(ワープロソフト)
  • デジパレ(デジタルカメラの画像の処理に使用)
  • ハイパーキューブ(絵を描く時など)
  • ヒューマンボディー(理科の学習で使用)
  • ワールドアトラス(社会科の学習で使用)
  • ケンチャコ大冒険『ローマ字キーマスター』(英語などで,ローマ字の学習に使用。ローマ字入力練習にも良い。)
  • ホームページビルダー2001(ホームページ作成時)
 育成学級は,ホームページなどで情報を発信する際にも,ほかの学級以上にプライバシーの保護に配慮が必要である。自己表現という意味では,制限が多く,表しきれない面がある。不特定多数でなく,特定のサークルで情報を発信しあえる「イントラネット」等を育成学級間ぐらいで整備できれば,同じペースで楽しく「ある程度相手の顔が見える」情報交換をしていけるのではないかと思う。
 本校育成学級の生徒は,全員コンピュータが大好きで自信ももってきている。当面はホームページ更新の取組を中心に,今後も楽しくコンピュータ学習を続けていきたい。
← コンピュータ室での学習風景。プリンター使用時は,みんながすぐにプリンターを使えるよう,ばらばらに着席する。みんなコンピュータ学習が大好きである.

入賞実践報告目次へ