〔奨励賞〕 小学校 総合的な学習の時間

電子掲示板の活用による遠隔地交流学習

京都市立桂坂小学校   土井 大輔
    山本 直樹

1.はじめに

 子ども達が暮らす生活環境は,良しにつけ悪しきにつけ子どもの物の見方・考え方に多大な影響を与えるものである。だとすると自分達が住んでいる地域にはないコンテンツを有する学校との交流や共同学習は,それぞれの地域では得にくい情報を補完しあったり,実感しにくいことを教えあったりできるという点で大変大きな意義があると考える。ある共通のテーマについて違う環境に住む子ども同士がそれぞれの感じ方で意見を交換することにより,多様な物の見方・考え方ができるようになる。この遠隔地同士の学校間交流にインターネットやテレビ会議を中心とする教育メディアを最大限に活用することにした。

2.目標

  • ちがう地域にすむ児童が共通の問題を共に学ぶことにより,多様な物の見方・考え方ができるようにする。
  • 環境問題について学んだことを生活に生かそうとする態度を育てる。
  • インターネットやテレビ会議システムなどの情報通信機器を活用して交流することにより,コミュニケーション能力や情報活用能力を育てる。
  • 電子掲示板や電子メールを利用する上でのネチケットを身につけさせる。

3.指導計画

  1. 電子メールによる自己紹介交換
  2. 電子掲示板を利用する上でのマナー(ネチケット)の学習
  3. テレビ会議で顔合わせ
  4. 海洋汚染に関するビデオ視聴
  5. 電子
  6. 掲示板での意見交流
  7. テーマごとに環境学習

4.コンピュータ活用の視点とその意義

 遠隔地同士で交流をするためのメディアとしては,まず電子メールがあげられるが,意見を書き込むコンピュータが限られてしまうという点や多人数対多人数の交流にはむかないなどの欠点がある。そこで今回の交流では電子掲示板を活用することにした。本校は先進的教育用ネットワークモデル地域事業の指定により光ファイバーの常時接続でインターネットを利用できる環境が整っている。このインターネット専用線は校内LANで6年生の教室のコンピュータともつながっているために,電子掲示板だと児童は教室からでも意見を書き込むことができる。また家庭でインターネット利用できる児童は家からでも交流に参加できる。
 いうまでもなくこれからの社会を生きる児童にはネット上で適切に情報を交流する能力(サイバー・コミュニケーション能力)を身につけさせることが社会の要請となっている。このような力をこの掲示板交流を通して身につけさせることも目標の一つとした。そこで6年生の発達段階にあわせて掲示板利用上のマナーも指導した。掲示板へのモラルのない書き込みが精神に与える影響,またそれにより実際に引き起こされた犯罪についても触れてインターネットの陰の部分も指導した。文字情報のやりとり以外の交流にはテレビ会議を活用した。さらに6年4組の児童には全員電子メールアドレスを与えて,自己紹介や個人的な質問メールなどに利用させた。

5.実践の内容

 今回交流することになった南伊豆町立三浜小学校は,伊豆半島の最南端にある全校生徒約70人の小規模校である。敷地の外がすぐ海なので,その環境を生かして運動会や遠足などの行事は海を利用したものを行っている。一方,本校は山の上にあり,全校生徒も約900人いるので立地環境,規模ともに三浜小とは対照的である。これぐらい生活環境が違えば地域性の違いによる多様な考えに触れあえる遠隔地交流のメリットが生まれやすいと考えた。
 今回の交流は自己紹介を電子メールでやりとりすることから始めた。名前,ネット上でやりとりするためのニックネーム,今回の交流で期待することなどを書いて送りあった。その内容はプリントアウトしてそれぞれの教室に掲示した。
 今回の交流で利用するために設置した電子掲示板は,外部からの不正な書き込みを防ぐためにパスワードをかけて関係者のみ閲覧できるようにしておいた。児童にはあらかじめ電子掲示板の利用法や注意などを指導した。
主な指導内容は次の通りである。
  • 1件の投稿であれこれたくさんの内容を書かない。
  • 感情的な書き込みはしない。
  • 個人的な連絡に使用しない。(連絡は電子メールを利用する。)
  • 内容のない書き込みはしない。
 全員の顔合わせに先立って,企画委員の打ち合わせをテレビ会議で行った。企画委員は三浜小が2人で桂坂小が4人とした。この打ち合わせでは主に第1回目のテレビ会議のメニューが話し合われた。その中で体の動きを伴うゲームをすることが提案されたのだが,企画委員同士で実際にやってみるとテレビ会議では音声と映像が少しずれてしまうためにうまくいかないことがわかった。それでゲームはしりとりゲームをすることに決まった。委員の児童はこの打ち合わせで実際に離れた土地に住む人同士が顔を見ながら話ができるテレビ会議のよさを初めて体験することができてとてもうれしそうであった。
(第1回テレビ会議)
 そして第1回目のテレビ会議の日を迎えた。まず最初にそれぞれの学級紹介を企画委員から行った。つぎに一人ずつカメラの前に立って自己紹介した。その後しりとりゲームをしたあと,桂坂側から交流のテーマソング「いつでもあの海は」を合唱により提案した。この曲はたまたま三浜小で使われている5年生の音楽の教科書に載っている曲でもあり,すぐに三浜側から拍手により承認された。
 このあと,それぞれの学級でNHKビデオ「地球汚染〜海はひそやかに警告する〜」を見た。このビデオは北海のアザラシが150種類もの化学物質に汚染されて死んでいったり,世界中のイルカから高濃度のPCBが検出されるなどの海洋汚染の実態を訴える内容となっている。そしてその初発の感想の電子掲示板への書き込みをスタートさせた。はじめはグループごとに書き込む時間を設定して,教師の付き添いのもとで書き込んだが,慣れてくると休み時間を利用して1人で書き込むことができ,また,帰宅後に家のコンピュータから書き込む児童も出てきた。
 意見交流する上で特定の相手に対して意見や質問をしたくなることがある。そんなときのために電子掲示板の「返信」の仕方も指導した。これにより,自分と同じような考えをしている児童に対して賛成意見を書いたり,もう少しくわしく教えて欲しいことに対して質問を書いたりするようになった。
一通り両校の初発の感想が出そろったときに読み返してみると,両校の児童の感想に大きな違いが見られることがわかった。三浜小の児童の意見には海を守るためにまず自分の生活を改めようとするものが多かったのに対し,桂坂小の児童の意見には環境問題を国や科学者に解決してほしいという他人任せな考えをする傾向が見られたのである。

具体的な書き込みは次のようなものである。

(三浜小児童の意見より)
下線(  )…自分の生活を変えようとする意見
[4] 人間って,,,,。 投稿者:海辺コクジラ
 日本から出た化学物質が数年ほどで世界一周してしまうので,すごい量をだしていることがわかりました。使うことが禁止されているpcbもまだたくさん使っているなんてと思いました。1人ががんばって化学物質の物を使わなくても,1年間だとぜんぜんちがうと思うので家にある化学物質の物を自然の物にかえてみたいなと思いました。

[14] ビデオを見て悲しかったよ 投稿者:海辺マグロ
 僕は,アザラシがたくさんいたのに,何百ぴきも死んでしまってかわいそうだと思いました。それは,いろんな汚染とかで死んでしまいました。鳥たちは,卵からでてくる子供のとりたちが頭が一つなのに体が2つの鳥とかがでてきたりしてびっくりしました。だから,僕はおかしを食べてその袋を燃やすと有害物質が出るから今度からあまりおかしを食べないようにしたいです。

(桂坂小児童の意見より)
下線(  )…自分ではなく人に解決してもらおうとする意見
[24] 研究をやめて!! 投稿者:桂坂の友香ちゃん
 pcbって,何か人間生活にメリットはあるのでしょうか?それとも,海を汚染するためだけに作られた化学物質なのでしょうか?もしもそんなために作られただけの化学物質だったら,即,研究を中止してほしいです。あんな可愛いアザラシ,イルカ,トリのために研究を進めている人たちにひとはだぬいでほしいです。人間は今,うみのひそやかな警告を真に受け,生活を見直す事が大切だと思います。

[30] ビデオを見た後の感想 投稿者:桂坂のさっちゃん
 私は,アザラシや,イルカや,鳥が,人間の作っている,科学製品や有害な物で,血液の中の赤血球をつぶしてしまうウイルスができてしまうということを知ってとても驚きました。人間が動物が死んでしまうほど,海を汚染しているとは思いませんでした。これからは,有毒にならないものを作ってほしいと思いました。


 そこでこの両校の児童の環境問題に対する考え方の違いに気づかせるため,児童に先ほどのグラフを見せて考えさせた。それにより,まず自分達自身が環境を守るためにできることをしていかなければいけないと感じたようだ。そのことは次のような掲示板の書き込みにもあらわれている。
Re:[46] 環境汚染(再) 投稿者:桂坂のなっちゃん
 私は海辺ウミネコさんの意見に賛成です。私も自分がしらないところでこんなに海がよごされていることは知りませんでした。汚されているな,と思うだけでなく,自分も何とか工夫をしなければならないと思います。 

Re:[29] 環境汚染てこわいな 投稿者:桂坂のタムちゃん
こんにちは,三浜小学校の海辺カモメさん。あなたの意見には,全く同感です。環境を大切にするということは,まず私達ができることから始めることが一番大切なんですよね!

>  他にも,洗剤を環境に優しい物に変えるとか,水のむだづかいをやめるとか,お肉のトレイや牛乳パックを回収して再利用すれば,資源のむだにもならないので,これ以上動物や自然を被害にあわせないですむと思います。そうして,私たちの地球を守っていきたいです。

桂坂小学校でも,給食の後は牛乳パックをきれいに洗って回収しています。三浜小学校ではどうしているのですか。教えてください。


[108] タムちゃんへ 投稿者:海辺 カモメ
 こんにちは。桂坂のタムちゃん。おへんじありがとうございます。そして,質問の答えなのですが,学校では牛乳パックを回収していません。でも,私達だけでも家で牛乳パックを回収していきたいと思います。これからも,私たちで自分達の地球を守っていきたいですね!

(テレビ会議で石けん作り)
*教室に掲示
環境学習の項目
  • 化学物質について
  • 有害物質について
  • 環境ホルモン
  • リサイクル
  • 鳥の奇形について
  • アザラシの大量死
  • 排水について
  • 珊瑚礁からわかる海の汚染
  • 環境に対する意識調査
  • 桂坂のゴミ調調査
  • 京都市の川の汚染調べ
 このような掲示板による意見交流を経て,児童は海を守るために自らの生活を変えていくことの大切さに気づいていった。そして自分達でもできる環境への取り組みをテレビ会議で交流する運びとなる。この第2回テレビ会議では,三浜小の子ども達に「環境に優しい石けん(廃油石けん)づくり」を紹介してもらった。あらかじめ必要な材料を知らせてもらい,実際の作り方はテレビ画面を通して教えてもらった。桂坂小からは本校で取り組んでいるリサイクル運動を紹介した。京都市全校で取り組んでいる牛乳パックのリサイクル,環境委員会が取り組んでいるアルミ缶の回収,電池の回収などを実演を交えながら知らせた。また交流のテーマソング「いつでもあの海は」をいっしょに合唱した。テレビ会議により何百kmも離れた子ども同士が歌で一つになるという不思議な感覚も味わうことができた。
 その後,三浜小との交流するなかで『私たちの環境』をクラスでテーマごとに調べ学習を始めた。
テーマについては右のような12項目である。 
子供たちの活動は意欲的であり,それぞれの班が調べてわかったことを教室に掲示し,それぞれの学習の内容を交換できるようにした。調べたことをクラスのみんなに知らせることでテーマが違う班でも共通した事柄については共同で交流し,より内容を深めることができた。
 また,子供たちは,日常的な環境についても大変関心を持ち,環境問題に関わる記事を切り抜いたりして,朝の会などで紹介し,身近な環境問題について考えることができた。
 現在,環境学習と並行して,三浜小と『海を守ろう』というテーマで掲示板やメールを使って共同で歌作りを進めている。

6.成果と今後の課題

海洋汚染に対する両校の児童の考え方の違いはこちらが予想した以上のものであった。今回の環境問題についての交流学習を「生きる力」にまで高めるという点では,子ども達が海を守るためにまず自分達の生活を改めていこうと変容していったのが大きな成果であった。実際,この学習を通して環境問題に対する本校児童の関心がかなり高まっただけでなく,環境を守るために自分の家庭生活も見直そうとするようになった。
また電子掲示板を使ったコミュニケーションにもかなり慣れてきた。相手を傷つけない,誤解を与えない表現(ネチケット)も定着してきている。これからもこの遠隔地交流学習は卒業まで続けていく予定である。

★南伊豆町立三浜小学校ホームページURL
http://www4.i-younet.ne.jp/~smihama/

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