〔奨励賞〕 中学校 総合的な学習の時間

情報教育と総合的学習の時間

― 地域学習から修学旅行調べ学習さらに国際交流へ ―

        

京都市立衣笠中学校 白波瀬 護

1.実践の概要

 本校では従来から一・二年生対象に,夏休みの課題として「地域学習」をとりあげている。
学習の進め方として,それぞれの生徒が関心のある事柄について課題設定し,現地調査(デジタルカメラの活用)・図書館での調べ学習,コンピュータ室での調べ学習,(「京都夢紀行」やインターネットを使っての検索)等により課題解決に向けて取り組む。さらに取材したデジタルカメラの画像と研究発表をまとめて,コンピュータを活用したプレゼンテーションをクラスごとにコンピュータ室で行った。この学習を,新教育課程での「総合的な学習の時間」につなげることで,より発展的な内容にしていきたいと考え,昨年度の試行期に時間をまとめ取りして,「人権学習」と結びつけてフィールドワークを行った。
 昨年度は社会科での夏休みの課題にとどまらず,学校の取り組みとして,新教育課程検討委員会や人権同和教育推進委員会で検討した結果,一・二年生の人権学活(総合的な学習の試行として10時間)として「地域学習」を位置付け,全員がフィールドワークを行い,幅広い観点で物事を考えさせる力を身につけさせるようにし,二年生では資料検索のためにインターネットを学年全員で利用してさまざまな観点からの意見や今日的な内容の資料を収集した。 
 さらに,本年度「総合的な学習の時間」を利用して昨年度から続けている「修学旅行の事前学習」や「身近な地域」の地域学習をさらに発展・拡大した形で「よその地域」である修学旅行訪問先の「東京・河口湖」での「班別自主研修」をフィールドワークとした「修学旅行」事前・当日・事後の調べ学習を研究テーマとして設定した。

2.実践内容 「修学旅行の調べ学習」

(1) 設定理由
 本校では,数年前から「身近な地域」の学習をすすめている。さらに,今年度「総合的な学習の時間」に地域学習を発展させ,他の地域と比較し調査・研究するため,修学旅行時に「東京・河口湖」の班別自主研修で現地をフィールドワークする。さらに事前学習,事後学習で資料収集・整理してまとめたものを用いて発表会を行うことにより,より自分の「身近な地域」に関心,愛着を持たせたい。さらに現在,「国際理解」外国人留学生との交流をすすめる中で,外への情報の発信と,内への情報の受信を情報機器の利用を通じて促進させたい。

(2) 学習内容
 本年度修学旅行の事前学習資料検索及び旅行当日の取材についてと学習発表会
本年度の修学旅行の事前学習の取組が昨年度三学期に行われたが,ここでもテーマごとの資料収集や関係機関への資料や情報提供の依頼を学年全員で取り組んだ。学習終了後すぐではないが,学習の取組の様子や調べた内容を画像や資料としてまとめ学年へ返す。さらに本番の旅行中の様子もデジタルカメラで撮影し,帰着後学年へ提示する。

本年度情報教育研究中間発表で実施 <別添資料>
@ 事前学習の取組 (昨年度二月)
 修学旅行事前学習冊子の製作,図書館,コンピュータ室でのインターネットによる資料検索
A 修学旅行中 東京都内班別自主研修
 旅行中も含めて,デジタルカメラを貸与,取材・資料収集も合わせた画像の撮影
B 帰着後,総合的な学習の時間に研究成果のまとめと製作
 夏休み中から旅行委員を中心にコンピュータ室で画像整理やプレゼンテーション製作

(3) コンピュータ活用の視点
 情報の収集については,インターネットを通じての検索なら,全員ができて当然という前提の中,どれだけ効率的に必要な情報が取り出せるかという点,さらに図書室での書籍による調べとの両立や補完する形での利用(書籍による情報の不足分を補う)を行った。ただし,ホームページ上にはいろいろな意見,書き込みがあり,自分たちの正しい判断のもとに取捨選択し資料収集を行わなければならないという点を理解させる。また,デジタルカメラでの取材をより多くの生徒に日常的に行わせ,その画像を研究発表用だけでなく,「国際理解」の学習活動に協力してもらっている留学生との交流の日常記録として残させる。さらに,プレゼンテーション用に加工することにより,コンピュータを利用した発表がいかに効果的に鮮明に正確に行えるか,簡単になおかつ正確に行えるかに気づかせる。自分たちの研究の成果については,レポートや壁新聞や報告だけでなく,コンピュータによる発表の方法もあることを理解させる。

(4) 生徒の変容
 @ デジタルカメラの活用について
 「修学旅行」の研究発表で司会や機器の操作,プレゼンテーションの発表を行う生徒は,修学旅行委員として三年生当初からクラスの代表となり修学旅行に中心的に関わってきたメンバーである。今回発表に使用する素材は,これらのメンバーが修学旅行中にデジタルカメラで取材したものである。発表者となった修学旅行委員のメンバーの多くは,一年生や二年生時にすでにデジタルカメラでの撮影を経験しており,インターネットでの検索もいろいろな教科学習の中で行っている。

A 「パワーポイント」の活用について
 プレゼンテーション用ソフトの利用や操作についても,社会科の時間や研究発表で何人かが使っている。しかし,今回初体験の生徒も全く抵抗なく,むしろ興味を持って取り組んでくれた。さらに基本的な操作を説明すると,一年・二年生で操作を修得している生徒が「核」となって指導し,どんどん意欲的に自分たちで工夫しながらスライドの作製を進めた。しかし,今回のように複数の人数で作業を進めてチーム発表することは初めてであり,少々勝手の違う点もあったようだが,スムーズに発表を終えることができた。

B 主体的な活動
 チームでのプレゼンテーション発表やリンク先へのインターネット関連ホームページなどの紹介に関して,生徒はほとんど初体験である。自分の力で取材,撮影してきた素材をデジタル加工し,発表にこぎつけたことが,自分たちの力で情報発信したことを実感させる原動力となったようである。さらに,現在取り組んでいる「国際理解」の中での外国人留学生との交流も,生徒自らの手で,例えば台湾と日本の文化の違いをインターネットで調べてみようとか,その様子を生徒自身がデジタルカメラで撮影して他クラスやいろいろな人たちに紹介しようと活動したり,留学生の発案でその出身国の情報が掲載されているホームページを閲覧しようというアイデアも持ち上がっている。

C 学習の深化
 これらの調査やまとめ,研究の発表,交流などがフィードバックされ,その結果,取組の基盤となってきた「地域学習」がより深められることになった「京都」「衣笠」への関心が高まって,愛着や親近感,誇りが持てるようになってきたと考える。このような「総合的な学習の時間」の中で,コンピュータを中心とした情報機器が何の抵抗もなく活用される状況となってきた。

(5) 考察
 修学旅行の研究発表プレゼンテーションを見ることにより,コンピュータによる表現方法について興味関心を持つことができ,「身近な地域」から視野を広げ,修学旅行で訪れた「東京・河口湖」という他の地域に関心を持つことができた。発表にかかわり,その製作過程の中で「インターネットによる情報検索」や「プレゼンテーション製作」による情報関連機器の活用をさらに進めることができた。「総合的な学習の時間」を使った他の地域の学習を通して,自分たちの「身近な地域」や「京都」を再認識し,さらに外部へ情報発信していくためのきっかけ作りとなった。また,広く世界に目を向け「国際理解」をテーマに外国人留学生と交流を持ち,その中での情報収集や活動内容の情報発信ができた。情報発信のツールとしての情報機器の利用や今後行うつもりのEメールによる交流,つまり互いの情報交換や意思疎通のための手段に情報機器を活用するなど,その活動の広がる可能性は高いと考える。

3.「総合的な学習の時間」におけるプレゼンテーションによる
  修学旅行研究発表会とその後の「国際理解」(外国人留学生との交流学習)

「東京・河口湖 修学旅行研究発表」 修学旅行委員によるプレゼンテーション発表

指導計画と本時の位置 

1 修学旅行の方面・コース決定後 事前学習研究の取組と冊子作り
 図書館での文献調査及びコンピュータ室でのインターネット情報検索  二年生時   6時間

プレゼンテーション表題画面 プレゼンテーション発表風景

2 修学旅行 自主研修用班作り 旅行の決まり作りなど 三年生4月時   3時間

3 修学旅行 班別自主研修の取材方法の説明 自主研修の班員役割分担
 班別自主研修コース決定 修学旅行直前準備  三年生5月時    8時間

4 修学旅行 班別自主研修の取材資料整理 図書館,コンピュータ室での補足資料の検索 
 研究発表作品の製作  三年生6月から9月時  12時間

5 修学旅行委員らで旅行中撮影した画像のプレゼンテーション用加工
 (夏季休業中及び9月と10月の放課後)9時間

6 修学旅行委員で発表当日のプレゼンテーションの役割分担と原稿作成リハーサル
 (10月と11月の放課後)

7 修学旅行にかかわる研究発表  本時

8 修学旅行にかかわる事前・当日・事後の研究と製作及び発表の感想と反省  1時間

 本年度から修学旅行の方面が長崎から東京方面に変わった。従来から修学旅行の事前学習を続けているが,昨年度の「総合的な学習の時間」の試行と本年度週1時間の「総合的な学習の時間」の中で修学旅行に関わる取組の時間が確保された。今回,三年生前期に取り組む内容として,修学旅行を事前学習と当日の実施という形にとどめず,班別自主研修を「取材・現地でのフィールドワークの時間」と位置付け,そこでの取材や調査の成果を帰着してからいろいろな形で研究発表製作としてまとめ,学年でプレゼンテーションの形にして報告する。その準備,活動の場・時間としても,「総合的な学習の時間」を利用した。 
プレゼンテーション作製風景 研究発表製作展示

本時の目標
  • それぞれがテーマを持って調査・研究の対象にした修学旅行の事前・当日・事後の取組のなかで,修学旅行委員を中心とした発表のプレゼンテーションを見ながら,コンピュータによる表現方法への興味関心をもつ。
  • 「総合的な学習の時間」を使った地域学習を通して視野を広げつつ内容を深める。修学旅行で訪れた「東京・河口湖方面」という京都から離れた別の地域にも関心を持ち,そこに関連する情報の検索手段として,研究発表作品の製作過程でインターネットを活用するなど,情報関連機器の有効性を学ぶ。
  • 「総合的な学習の時間」には,他の地域の学習を通して自分たちの「身近な地域」や「京都」を再認識しながら,これらの情報を広く外部へ発信していくということへの動機付けとともに,さまざまな地域への関心を高めていく。
使用した機器と作品等
  • デジタルカメラ  ビデオカメラ,デッキ  プロジェクター LAN(インターネットに接続)
  • 修学旅行研究作品の展示 テレビ会議システム ノートコンピュータ
  • 利用ソフト マイクロソフト社 「パワーポイント2000」  「アウトルックエクスプレス」
(「国際交流」について 別紙指導用プリント抜粋)

立命館大学 外国人留学生の方に協力のお願い

今回,本校の三年生の「総合学習の時間」に「国際理解」をテーマに学習を進めます。その中で世界の国々のことについて知ること,また,日本や京都の伝統文化,さらには身近な衣笠の地域の事についても調べ,その上で世界のさまざまな国の人といろいろな形で交流を持てたらと考えています。そこで,ぜひ立命館大学の外国人留学生の方々に次のようなことについて協力をお願いします。

(協力してほしい方)
 日本の中学生や学校,また日本や京都の文化に興味のある方,あるいは自分の母国の文化や遊びなどを日本の子供たちに教えてみようと思われる方で,交流活動をボランティアでしていただける方。
  • 三年生は6クラス237名で,1クラスは39−40名です。募集人数は6名以上で,それぞれ違う国の方々を希望します。
  • こちらで指定する日のうち,少なくとも一回以上,できれば何回か中学校に来てもらえるとありがたいです。
  • 場合によっては,三学期(1月から3月)もお願いすることがあるかもしれません。日本語はそれほど上手でなくてもかまいません。日本語や英語などでコミュニケーションできればと考えています。
授業の中でやってみたいこと(まだ,はっきりと決まっていませんが)
- 生徒と一緒に折り紙を折ってみる。生徒と一緒に英語や留学生の母国語で紙芝居を作る。
- 中学校にある和室で茶道に触れてみる。
- 中学校のコンピュータ室で留学生の母国のホームページを見る。
- 中学校のコンピュータ室から留学生の母国の学校にメールを送る。
- 留学生の母国の話や遊びを紹介してもらう。
- 日本や京都の文化や衣笠中学校のことを紹介する。
他にもアイデアがあればお知らせください。
留学生交流風景 和菓子作り実演 留学生交流風景 合唱

学習の感想
  • 内容は班で一つずつ質問。昔の遊びをする。台湾にもある。やってみようとおっしゃった。明るい方で楽しそうに一緒にやってくださった。今後については,もっと向こうのことを知りたいという声が多い。台湾の方にお手玉の遊び方を教えてもらった。向こうの雑誌やCDを持ってきてくださった。台湾では髪の毛は耳の下2pまでとか制服があるとかいう話を聞いた。感想はよかったという声。思ったより日本語が上手。ALTとちがい新鮮。もう少し向こうの国の感じなど聞きたい。
  • 新しい韓国からの女性の留学生 金 栗さんが来校。生徒が事前にまとめた韓国に関する質問を行い答えていただく。そのようすをデジタルカメラで撮影。
  • 台湾からのシェリーリーさん二度目の来校。事前に担任から,生徒からの感謝の手紙や質問内容,要望等を大学経由で本人に届ける。当日,本人にもいろいろ準備してきてもらい,クラスの生徒を「教育」,「経済」,「文化,言語」の三つのグループに分けた。シェリーさんに,まず日本のことを紹介してから台湾の事柄を説明,紹介してもらう形で交流を進める。
  • コンピュータ室で大テーマを決めた後,班ごとに質問を考え,それに対して日本側の答えを調べたり,考えたりして用意する。

4.成果と今後の課題

成果  生徒のコンピュータ利用のスキルアップ

 学校生活のさまざまな場面,学校行事,クラス行事で生徒たちがデジタルカメラを利用して,画像の記録収集を行った。その画像を利用した生徒たち自身によるプレゼンテーションの製作と発表,ホームページづくりなど,コンピュータの高度な活用が可能となってきている。さらに,この流れを各学年が踏襲,発展させていければと考える。

課題  受信と発信に関わる問題点

  • 受信
     インターネットのサーチエンジンを利用した検索では,ネット上にさまざまなホームページがあり,さまざまな意見の書きこみもある。たとえば,出力したプリントを教師が回収・保管することや,問題のあるようなホームページの閲覧について指導を行うなどの配慮が必要である。さらにインターネットに常時接続しているということは「ネットを通じての侵入」が可能であり,学校の重要な情報(個人情報も含む)が第三者の手にわたる危険性もはらんでいるということである。そうした面で,セキュリティー問題・危機管理に対する意識や対応する力を高める必要がある。
  • 発信
     今後,「総合的な学習の時間」を使って「国内外の学校等」とメールを利用した交流を考えている。 技術・家庭科の時間にコンピュータ室内でのメールのやり取りは行われているが,対外的にメールを送る場合の基本的な「メールの作法」等についてしっかり指導していく必要がある。現段階では,生徒個人で自由に送らせるのではなく,教師のチェックや集約が必要であると考える。
  • 情報モラル
     情報モラルという点でも,あらゆる場面を捉えて指導する必要がある。
  • 今後の発展・方向性
    - 修学旅行の事前・事後学習の一環として「TV会議システム」を使った現地の中学校との交流や取材。さらに「身近な地域」の学習を発展させた形での地域,校区,京都の紹介。
    - 自分たちで課題設定し,取材したり調査・撮影したものをプレゼンテーションにまとめ,「総合的な学習」の研究発表として文化祭で研究発表する。

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