T.本校の概要

                        

1.沿革

 「桃陽」というのは、大正時代に回遊式の日本庭園のある「桃陽園」という貸別荘が、この地にあったことに由来しています。夏目漱石が、日記に、大正4年3月21日(日)「桃陽園」に来て泊まり、翌22日(月)に園主に会ったことなどを記しています。学校の南側の「まなびの森」がその庭園の跡で、石橋や泉の跡などの遺跡が残っています。
 昭和27年 小児結核保養所京都市桃陽学園として開設
 昭和35年 桃陽学園より教室を分離、新校舎(木造)完成
 昭和47年 国立京都病院に教室を開設(現在の国立病院分教室)
 昭和54年 京都市立桃陽養護学校として独立開校、新校舎完成、訪問教育発足
 昭和57年 京都市桃陽学園からへ京都市桃陽病院へ名称変更・新病棟完成
 平成 8年 京大病院分教室を開設(それまでは訪問教育)
 平成11年 独立開校20周年記念『願の像』除幕
 平成12年 京大病院分教室を新病棟へ移転・拡充
 

2.教育部門 [本 校]・[訪問教育]・[京大病院分教室]・[国立病院分教室]

 桃陽養護学校は、病気により入院や療養が必要な子どもに教育を行っている「病弱養護学校」です。京都市内はもとより京都府下および他府県など、全国の小学生・中学生で京都市内の病院に入院している子どもたちを受け入れています。

教 育 部 門  学 部  桃陽養護学校と提携している病院
本     校 小・中学部 ・京都市桃陽病院 【学校と病院が隣接】
国立病院分教室 小・中学部 ・国立京都病院 【病院の別棟に分教室】
京大病院分教室 小・中学部 ・京都大学医学部附属病院 【病院内に分教室 】
訪 問 教 育
 
小・中学部
 
・京都府立医科大学附属病院 【主にベッドサイド】
・京都大学医学部附属病院[精神科・神経科]

 その他に14の公立・私立病院       
 
 *[本校小・中学部]は、最近の年間延べ在籍数は、ほぼ100名程度です。
 *[訪問教育]の指導は、1回 120分3単位時間、週3回(週9単位時間)の個別授業を基本に行っています。
 *[京大病院分教室][国立病院分教室]では、教科指導を行っています。午後を中心に児童生徒によっては、病状等に合わせて、病室での個別指導なども行います。
 「京大病院分教室」は、平成8年度「訪問教育」から切り換えて設置しました。京大病院からは、分教室での教育は、病気と前向きに向き合う力や生きる意欲につながり、子どもたちの治療にもよい影響を及ぼしているとの評価を得ています。

訪問教育の対象病院と実施年度

  訪問教育対象病院名 10 11 12
京都市立病院  
京都府立医科大学附属病院  
京都大学医学部附属病院    
京都第二赤十字病院      
(医)洛和会 音羽病院        
(福)京都桂病院            
京都第一赤十字病院              
(医)医仁会 武田総合病院                    
京都市身体障害者リハビリテーション                      
10 西京都病院                  
11 総合病院 日本パブテスト病院                      
12 社会保険 京都病院                      
13 (社)京都保険会京都民医連中央病院                      
14 六地蔵総合病院                      
15 京都大学胸部疾患研究所附属病院                

     ※京都大学胸部疾患研究所附属病院は、平成10年4月 京都大学医学部附属病院へ統合


3.児童生徒在籍数

 最近の児童生徒の年間のべ在籍数は約200名程度で、転入・転出は、合計で年間約300名近くあります。全国的には、多くの病弱養護学校の児童生徒数は年々減少傾向にありますが桃陽養護学校では、分教室や訪問教育の充実を図り、特に、訪問教育が増加傾向にあります。はじめとして、学校全体の児童生徒数は、のべ人数で10年前のほぼ2倍になっています。
 

4.病気の種類

 [本校小・中学部]では、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、肥満症などの慢性疾患の多い傾向は続いていますが、病気の種類は多岐にわたっています。
 また、最近の傾向として、狭い意味での「心身症」「神経症」、つまり「身体の症状を主とするが、その原因に心理的なものがあり、治療(および教育)のためには心理的因子についての配慮をしなければならない」ケースが増えてきています。また、拒食症などの食に関するものも増加傾向にあります。それらの多くは、不登校傾向を伴っている場合が多いです。
 [訪問教育]や[京大病院分教室]では白血病などの病気や悪性腫瘍、胆道閉鎖症など、難病の児童生徒が増加し、移植手術や高度な医療を受けています。それとともに、骨髄移植や化学療法による免疫力低下により安静の必要な児童生徒や、ターミナル期を迎えている児童生徒も増えてきています。ターミナル期における教育が一つの課題となっています。
 

5.前籍校で不登校・不登校傾向のある児童生徒[本校中学部][訪問教育

 特に、[本校中学部]では、前籍校で不登校および不登校傾向のある子の増加が顕著になってきています。対人不安や強迫観念のある子などの心身症や神経症の児童生徒、肥満、喘息、アトピー性皮膚炎などの児童生徒に見られ、中学部全体の約7割以上に達しています。
 また、[訪問教育中学部]でも不登校の生徒が増加する傾向があります。[本校小学部]でも2〜3割程度ですが、その傾向が見られます。
 桃陽養護学校に転入学してきた子どものほとんどは、授業に入れない場合でも、多くは学校へ登校して来ます。そこで、[本校]では、そうした課題の児童生徒に対応する「リラックスルーム」を設置し、担当者を中心とした取組を進めています。
                       

6.医療と教育の連携    

 病弱養護学校と病院とは、お互いの組織や役割を尊重し、理解と協力を基本に連携を図っています。
 学校と病院は、お互いにそれぞれの得意分野でそれぞれを支え合い、子どもたちの療育と教育にあたっています。よりよい連携は、お互いに必要とする部分を、お互いのノウハウや組織の人材を生かして、信頼と互恵の精神で、協力を具体的に進めることから生まれます。
 (1)学校の病院への支援・協力(学校→病院)
  ○夜間学習会は、教員2〜3名で、病院で実施(小学部週1回、中学部週2回)
  ○病院内での生活指導上の問題の解決への協力(特に生徒指導部を中心に)
  ○生活指導にかかわる病院内巡視(特に、準夜勤の時間帯など)  
 (2)病院の学校への支援・協力(病院→学校)
  ○校外での学校行事への医師・看護婦の付添い
  ○夏季の生徒指導合同研修
  ○学校訪問への医師の参加
 (3)その他
  ○マスコミ等の取材への迅速で積極的な協調した対応
 

U.学校巡回訪問 〜病院との連携を深めて〜

1.「来ていただく教育相談」から「出かけて行く教育相談・支援」へ

 社会の変化とともに、肥満は大人だけでなく、子どもの世界にも大きな影を落としてきています。また、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患なども増加の傾向にあり、学校での指導課題、配慮すべき課題となってきています。加えて、家族や地域での人間関係の希薄さ、様々な体験や集団生活の経験不足などにより、神経症や心身症をあわせもち、不登校の状態に陥るケースなども多くみられます。
 学校では、校長、教頭、養護教諭を中心に実態を把握し、様々な取り組みが展開されています。けれども、肥満症や喘息などの病気についての認識の違いや、不登校の一部には心身症・神経症などの病気の児童生徒がいるという認識がない場合など、学校における、肥満や喘息や不登校などの理解や認識の違いにより、学校における教育相談や支援・対応のあり方に相違があります。中には情報が不十分で保健室や学校で困惑しているケースもあり、具体的な取組みや対応などについて相談したいという潜在的なニーズもあります。
 そこで、病弱養護学校や病院についての情報提供などを含め、「きていただく教育相談」から「出かけて行く教育相談」「出かけて行く支援」として、学校巡回訪問を通して教育相談を行い、開かれた学校として「地域の病弱教育のセンターとしての役割」を、学校と病院が共に機能することで、積極的に果たして行こうとするものです。
 

2.学校巡回訪問の現状

 京都市内の小中学校を中心に、校長(教頭)、養護教諭等を対象として、部主事(管理職)等と桃陽病院の医師等が平成5年度より行っています。8年間でのべ317訪問しています。
 内容 1)病弱養護学校および子どもの病院(桃陽病院)等についての概要説明
    2)各学校の児童生徒についての相談など





 


学校巡回訪問 小  学  校 中  学  校 児童相談所等 教育委員会 合  計
平成8年度  15   0     15
平成9年度  19   9     28
平成10年度  29  42     71
平成11年度  39   1     40
平成12年度  50  27    5   9 91
   ※ 時間の目安は、1校30〜40分程度[午前の半日で2〜3校を巡回]
 

3.学校巡回訪問の改善

 今までの学校巡回訪問で、各学校においても病弱教育にかかわる課題が様々顕在化していることがわかってきました。しかし、それらを単に「各学校の課題」であるとして見るのではなく、「病弱養護学校としても積極的に支援していくべき課題」としてとらえることが必要であり、病弱養護学校のこれまで蓄積してきた専門性を生かして、支援を模索する必要があると考えました。
 つまり、病弱養護学校が、より積極的な学校としてのあり方として、市民の信頼に応え、家庭や地域と連携・協力して一体となって子どもの健やかな成長を図っていくためにも、病弱養護学校の理解推進を図る情報提供を中心とした学校巡回訪問から、より積極的な姿勢で取り組まなければなりません。
(1)教育相談としての学校巡回訪問
  概要説明の理解推進を中心とした学校巡回訪問から、各学校の「教育相談」の支 援を中心とした学校巡回訪問を(病弱養護学校の教育相談としても)行います。 
(2)保護者も含む教育相談の実施
  学校巡回訪問で、当該学校の校長の判断のもと、校長および教頭同席で、保護者 も含めて「教育相談」をいます。
(3)支援としての退学した児童生徒のアフターケア
  退院退学した児童生徒のアフターケアとして、学校へのフォローを行います。特に、各学校から様々な経過を経て入院入学してきているケースの場合、本来校への報告などが重要です。
(4)肥満・喘息スクール(病院)の参加者のフォローアップ
  病院の肥満スクールや喘息スクールへ参加者の学校へ、学校への支援として報告 などをすることでフォローアップを図ります。
 

4.病院との連携の改善

(1)学校巡回訪問する医師の参加の拡大
  これまでは、主として病院長と学校巡回訪問を行ってきました。12年度からは、 より積極的に、病院長の理解のもと他の医師の学校訪問への参加協力を得ることと しました。
  医師と教育現場の校長・教頭・養護教諭とのつながりの深まりも期待できます。
(2)主治医との学校巡回訪問
  さらに、児童生徒の本来校へは可能な限り児童生徒の主治医と訪問することとし ました。主治医との学校巡回訪問は、児童生徒の本来校への復帰やその後の学校生 活にかかわって、今後、充実させたいと考えています。
  



 
   学校巡回訪問に参加する医師  合計
平成10年  院長  1名
平成11年  院長・医師A  2名
平成12年  院長・医師A・医師B  3名


 学校訪問当日は、
 医師1名と訪問。
 

5.訪問対象の拡大

 相談内容や児童生徒の実態により、必要な場合には、学校以外の相談機関や福祉関係の機関などへも訪問を行うこととしました。具体的には、児童相談所(児童福祉センター)、子ども支援センター、福祉事務所などです。医療費の援助にかかわる福祉制度など、「桃陽」が具体的な内容まで福祉事務所に問い合わせ、ソーシャルケースワーカーへの連絡を取るなど、入退院にかかわる福祉情報の提供など、各学校のニーズに応え具体的に各学校の支援を図って行きます。
 

6.「待っている学校」から「積極的にニーズに応えていく学校」へ

 入院療養しながら教育を受けられる病弱教育についての理解推進を図り、今後を展望する時、病弱養護学校は、「地域に開かれた学校」として、社会のニーズを敏感に把握し、病弱教育の環境や条件を整え、自ら進んで「待っている学校」ではなく「積極的にニーズに応えていく学校」とならなければなりません。その一つの方策として、「病弱教育のセンター」として、学校巡回訪問(教育相談・支援)の改善を図りながら、地道な努力を行っています。その他の課題についても、そうした観点からの取組を進めたいと考えています。