参考資料B  「学びのすすめ」〜確かな学力の向上のための2002アピール(H14,1,17)  

  本年4月から、全国の小中学校で、新しい学習指導要領が全面実施されます。

 新しい学習指導要領は、基礎・基本を確実に身に付け、それを基に、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する能力や、豊かな人間性、健康と体力などの「生きる力」を育成することを基本的なねらいとしています。

 文部科学省としては、「心の教育」の充実と「確かな学力」の向上とが教育改革の特に重要なポイントであり、とりわけ、今の学校教育における大きな課題であると考えております。

 一方で、授業時数や教育内容の削減によって児童生徒の学力が低下するのではないかという不安に対しては、新しい学習指導要領のねらいとその実現のための施策とを今一度明確に示し、そのねらいが確実に実現されるよう更に努力する必要があると考えます。

 平成8年7月の中央教育審議会答申及び平成10年7月の教育課程審議会答申でも指摘されているように、新しい世紀を迎え、これからの日本と世界は様々な面でこれまで以上に激しい変化に直面することになるでしょう。そのような中で、これからの社会を担う児童生徒が主体的、創造的に生きていくためには、基礎・基本を確実に身に付け、それを基に、自ら課題を見つけ、学び、考え、判断し、よりよく問題を解決する力が重要となると考えます。

 こうした視点から、新しい学習指導要領では、教育内容の厳選を図った上で、繰り返し指導や体験的・問題解決的な学習などのきめ細かな教育活動を展開することによって、基礎・基本を確実に身に付け、自ら学び自ら考える力などを育成することをねらいとしています。また、中・高等学校においては、選択学習の幅を拡大し、一人一人の個性や能力、進路希望等に応じた学習が大幅にできるようにしました。さらに、自ら学び考える力、学び方やものの考え方、問題の解決や探究に主体的・創造的に取り組む態度などを育成することをねらいとして総合的な学習の時間を新設したところです。

  また、諸外国に目を向けると、アメリカ、イギリス、フランスをはじめとする欧米諸国やアジアの国々においても、教育こそが一国の未来にとっての最重要課題であるとして、児童生徒の学力の向上等に向けた教育改革が推進されているところです。

 昨年12月に公表された、経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA)」の結果によると、我が国の児童生徒の学力は、単なる知識の量だけでなくそれを活かして実生活上での課題を解決する能力についても国際的に見て上位に位置していることが明らかになりました。その一方で、我が国の生徒の「宿題や自分の勉強をする時間」は参加国中最低である、最も高いレベルの読解力を有する我が国の生徒の割合はOECD平均と同程度にとどまっているとの結果も出ています。

 これらは、これまでの我が国の初等中等教育において、知識や技能だけでなく思考力、判断力まで含めた学力の育成に向けて取り組んできたことの成果の現れであるとともに、学びへの意欲や学ぶ習慣を十分身に付ける、あるいは、一人一人の個性や能力を最大限に伸ばしていくといった課題を示すものであると考えます。このような課題については真摯に受け止め、改善に向けた努力を惜しんではなりません。

 以上を踏まえ、新しい学習指導要領の全面実施を目前に控えた今、文部科学省としては、新しい学習指導要領のねらいとする「確かな学力」の向上のために、指導に当たっての重点等を明らかにした5つの方策を次の通りお示しすることとしました。

  各学校においては、この趣旨をご理解いただき、各学校段階の特性や学校・地域の実態を踏まえ、新しい学習指導要領のねらいとする「確かな学力」の向上に向けて、創意工夫を活かした取組を着実に進めていただきたいと思います。

 

 

1 きめ細かな指導で、基礎・基本や自ら学び自ら考える力を身に付ける

      少人数授業・習熟度別指導など、個に応じたきめ細かな指導の実施を推進し、   基礎・基本の確実な定着や自ら学び自ら考える力の育成を図る

 

2 発展的な学習で、一人一人の個性等に応じて子どもの力をより伸ばす

      学習指導要領は最低基準であり、理解の進んでいる子どもは、発展的な学習で   力をより伸ばす

 

3 学ぶことの楽しさを体験させ、学習意欲を高める

      総合的な学習の時間などを通じ、子どもたちが学ぶ楽しさを実感できる学校づ   くりを進め、将来、子どもたちが新たな課題に創造的に取り組む力と意欲を身   に付ける

 

4 学びの機会を充実し、学ぶ習慣を身に付ける

      放課後の時間などを活用した補充的な学習や朝の読書などを推奨・支援すると   ともに、適切な宿題や課題などを家庭における学習の充実を図ることにより、   子どもたちが学ぶ習慣を身に付ける

 

5 確かな学力の向上のための特色ある学校づくりを推進する

      学力向上フロンティア事業などにより、確かな学力の向上のための特色ある学   校づくりを推進し、その成果を適切に評価する