(2)評価はどのように変わってきたか。

 

(ア)評価の客観性

  教育評価の歴史は,どうすれば客観的な評価ができるかという難問へのあくなき追求でありました。口頭試問から筆記試験へ,筆記試験でも論文体やレポート法から客観テストへという流れは,その経緯を物語っています。

  「評価に客観性を」という本格的な動きは,1910年頃から,アメリカ合衆国でソーンダイクという教育学者を中心に始まりました。これは,採点者の主観によって大きく評価結果が異なる評価の方法,たとえば面接法や論述試験などを批判しています。そして,正誤法(○×法)や多肢選択法などの客観的テストの方法論が強調されたのです。

 

 

(イ)客観性から教育性へ

  「評価の客観性こそ大切」という動きに対して大きな疑問を投げかけたのは,1930年代のタイラーです。彼は,子どもたちが自分の力で課題を見つけ,自分なりに課題追究を行い,課題解決へと導くといった問題解決学習を強調しました。

 そして,知識・理解や技能だけではなく,関心や意欲・態度といった情意面での育ちにも着目しよう,思考力や判断力といった高次の能力にも着目しようという発想から,これらの客観的に把握・評価できない,いわゆる「見えにくい学力」の評価に力点をおくべきだと主張しています。

 

 彼の主張にしたがえば,知識・理解や技能の面しか測定できない客観テストは,子どもに付けさせたい能力を真に評価する適切な評価法ではないだけではなく,むしろ子どもの成長・発達には有害でさえあります。

 したがって,子どもの学習過程の成長度をできるだけ全体として評価するためには,客観性を求める評価観から目標の実現状況の確認を優先するする評価観への転換をと強調したのです。

  こうした動きの延長線上の1960年代に,ブルームが登場しました。かれは,知識・理解などの「見える学力」のみを評価する立場より,関心・意欲・態度や思考・判断などの「見えにくい学力」をも重視して評価する立場の方が,はるかに教育的であると主張しました。そして,評価の働き(機能)を重視する,「形成的評価」という評価方法を提示したのです。