音羽の自然と歴史その28

【第28回】「波切不動尊参道」の道標

 京阪電車四ノ宮駅の踏切を渡った北側に「波切不動尊参道」と書かれた道標が建っています。西向きの面には「波切不動尊参道是ヨリ北へ四丁余」。また東向きの面には「昭和十二年四月不動會」と書かれています。南北の面には何も書かれてはいません。また,字に赤い朱が入れてあるのが特ちょうです。この道標は何を意味しているのでしょうか。「ここから,北へ4丁余り行けば,波切不動尊があり,この道はその参道になっています」という意味です。「丁」というのは,昔の距離や面積の単位で,1丁というのは距離なら約109m,面積なら約100アールを表しています。この場合は距離ですから,約436m余り北に行くということです。この通り行くと,一灯園の中を通って山すそまで行くことになります。実は,最近まで一灯園境内の北方藪(やぶ)の中に「不動尊石仏」がまつられていたので,人々がこの道を通ってお参りをしていたというわけです。

「不動尊」というのは,どんな仏さんなのでしょうか?いっぱんには「お不動さん」の名で親しまれる仏さんで,大日如来(だいにちにょらい)の化身とも言われています。不動明王(ふどうみょうおう)とも言われ,「憤怒の形相(ふんぬのぎょうそう)」をしていて,たいへんこわい姿です。「波切」というのは,どうも,この仏さんを日本に伝えた「空海」というお坊さんが,当時の中国の「唐(とう)」という国に,船に乗り海を渡って行ったので,そのお話にちなんで「波切不動尊」という名前がつけられたと言われています。
 


(記事 S.A)