学校長からのお便り 5月号

巣立つ春 つくえのきずを そっとなぜ  

 
平成十九年度 音羽小学校卒業式 式辞

 春三月弥生,早春の息吹がそこここに漂うこのよき日に,多数の御来賓の方々並びに保護者の皆様方の御臨席を賜り,音羽小学校 第六十八回 卒業証書授与式を挙行できますことを心より御礼申し上げます。

 さて,小学校六年間の課程を修了し,本日音羽小学校を巣立ちゆく七十二名の卒業生のみなさん,卒業おめでとうございます。
 先ほどお渡しした卒業証書には,六年間のみなさん自身の頑張りと,小学校入学以来,ひたすらみなさんの成長を願い,細やかな愛情を惜しげもなく注ぎ続けてこられたお家の方の真心と,熱心に指導してこられた先生方の努力が込められています。どうかいつまでも大切にしてください

 みなさんは,平成十四年四月八日,桜の花に包まれたこの音羽小学校の門をくぐり,入学をされました。そして,歴史を刻んだ校舎にそして,桜や榎や銀杏の大樹に見つめられながら六年間の小学校生活を送ってきました。その六年間の出来事や思い出が今,みなさんの心の中で次々とよみがえってきていることでしょう。
 自分の背中よりも大きいランドセルを背負い,集団登校に遅れまいと小さな一歩を懸命に踏み出し踏みだしあるいた,一年生の頃。学年が上がるに連れ,体も心も大きく育ち,自分からできることもたくさん増えてきました。

 私が皆さんと出会ったのはちょうど一年前のことでした。
着任式で,背筋を伸ばし,しっかりと私の方を見据えて話をきいていました。
 4月,新年度の始業式でもそうでした。
 入学式の翌日から集団登校。一年生を気遣いながら,集団登校を率いるみなさんがどれほど頼もしく見えたことか。

 奈良への遠足はグループ行動でした。東大寺では,時間を有効に使い,鐘楼や二月堂,そして勧学院などを男女仲良く,見学した姿に驚かされました。
 運動会での組体操,「心を一つ」に仕切った演技は感動を呼びました。私の胸の中にも熱いものがこみ上げてきたことを今でもありありと思い出します。

 修学自然旅行での,経ヶ岳登山。保月山から杓子岳へ。絶壁の切窓を超えて,心臓をどくどくさせながら経ヶ岳の頂上へ。チャレンジしたもの全員が登り切りました。最後に頂上を踏みしめた,私も,拳を強く握りしめ,思わず「やったあ」と快哉の声を上げていました。

 そんなみなさんの姿を見てきた私は,いつしか君たちのことを「音羽自慢の6年生」と呼ぶようにもなっていました。

心豊かにたくましく成長したみなさんは,この音羽小学校の大きな喜びであり,誇りです。今,新たな決意を固めて中学校に進もうとしているみなさんに,はなむけの言葉を贈ります。

 みなさんは孔子と言う人の名前を聞いたことがありませんか。その孔子とう人の言葉をまとめた論語という書物があります。その一説に「子曰く,道に志し,徳に拠り,仁に依り,芸に遊ぶ」と言う文章があります。
 ここには,社会に通用する立派な人になるための心得がかかれています。中でも,その中にある「芸に遊ぶ」とは孔子の生きていた時代の学問や礼儀・作法,馬術や弓などの嗜みを身に着けることの大切さを語ったものです。
 私は皆さんに「芸に遊ぶ」を「知に遊ぶ」と言い換えて贈ります。知とは知識の知であり,物事を知ると言うことを表します。
「知に遊ぶ」と言うのは,「知ることを楽しむ」「知識をほしいままに自分のものにする」ことです。
「身の回りのたくさんの事象や出来事に関心を持ち,知識を得ること,知ることが楽しくて仕方がない」と言う生活をすることです。
いろいろなことに興味関心をもち,そのことを深く追求し続けること,「知に遊ぶこと」を楽しんでほしいと考えています。
そういう願いを込めて「知に遊ぶ」という言葉を贈ります。
人は「知は力」「知るは力なり」と言い続けてきました。
「知に遊び,知ることを楽しみ続ける,学び続ける」こんな生活をこれから,大切にしていってほしいと願っています。

 さて,保護者の皆様,お子様のご卒業おめでとうございます。お子たちがこのように健やかに,りりしく立派に成長された姿をご覧になり,また入学してからの六年間の生活を思い出され,感慨も一入のことでしょう。心よりお祝い申し上げます。併せて,これまでの音羽小学校に対する皆様の温かいご支援とご協力に,心から厚く御礼申し上げます。

 最後になりましたが,御来賓の皆様には,御多用な中,巣立ち行く七十二名の卒業生に,祝福と激励を賜り,誠にありがとうございました。合わせてこれまでの卒業生に対するご厚情に深く感謝を申し上げます。
 以上を持ちましたはなはだ措辞ではございますが,式辞とさせていただきます。


         平成二十年三月二十一日
             京都市立音羽小学校 校長 田上 恭史

 

 
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