「臨床心理学・カウンセリングマインド」で, |
||||||||||
子どもと楽しく過ごそう! |
||||||||||
1.臨床心理学(clinical psychology)とは… 臨床心理学(clinical psychology)は,心理的に不健康な面すなわち問題行動をもつクライエントを, より健康な方向に導くために,心理学並びに関連諸科学の知見と方法をもちいて,クライエントを理解 した上で,専門的援助を行う応用心理学の一分野である。 |
||||||||||
・クライエント(client)… | 心理的に不健康な状態は,原理的には誰もが陥り,また回復しうるも のである。そのことを強調するために,臨床心理学では,一般に,「患 者」という言葉を用いず,「クライエント」(弁護士など専門家に相談 する「依頼人」という英語からの転用)という呼び方をする。 |
|||||||||
|
||||||||||
☆心理アセスメントの目的と倫理 |
||||||||||
心理アセスメント(psychological assessment)のアセスメントとは,評価・査定という意味である。 心理療法など種々の臨床心理学的援助の過程において,対象となる個人または集団について理解するた めに,面接や心理検査(test)などの技法を用いて行うかかわりのことである。 |
||||||||||
|
||||||||||
・アセスメントの目的 |
||||||||||
アセスメントの目的は,個々のクライエントにとっての解決すべき問題を明らかにし,それに適した 援助方法を見出すことにある。したがって,問題点や逸脱行動の発見のみにこだわらず,その人らしさ として,行動特性や性格特徴をとらえ,人物像を記述し,さらに発達変化可能性の探求を心がけること が大切である。 |
||||||||||
・アセスメントの倫理 |
||||||||||
アセスメントは,セラピスト(カウンセラー)とクライエントとの共同作業である。査定された内容 とそれに基づく方針が,両者に共有されてこそ効果的な援助が可能となる。具体的には,個人のプライ バシーを守り,主体性を尊重する姿勢をもつこと,セラピストが理解した内容をクライエントに明確に 伝えていくこと,そして十分に話し合うことを心がけ,クライエントが安心して自分の問題に取り組み, それについて語ることのできる場を提供する。 |
||||||||||
臨床心理査定 |
||||||||||
☆性格・パーソナリティの査定 |
||||||||||
査定(assessment)とは元来,sessが「税」のことなので,財産や科科を評価するという意味である。 それゆえ,心理臨床における性格・パーソナリティの査定とは「クライエントの性格や自我のありかた, 健康度や病理度やその水準,症状の意味や診断,心理療法の可能性や方法,効果の予測や経過 の見通し等々について評価すること」である。 それはもっとも広義には「人間理解」ということになり,また,もっとも狭義には「性格検査」 (personality test),または「心理検査」(psychological testing)の意味となる。この両面の意味とも重要 であるが,性格の査定という言葉は多くは狭義の意味において用いられる。 性格の検査であるからにはまず,「性格」(character),または「パーソナリティ」(personality)とは何 か,が明確化されていなければならない。それは,実体的な「もの」ではなくて,その人のありかたが 一定の傾向にあるという「こと」である。この「こと」は,たとえば,さまざまにありうるありかた(「存在 様式」)として「類型」的に把握することも可能である。伝統的な心理学においては,性格はまた種々の 「特性」によって測定されうると考えられてきた。この性格の類型論(typology)と特性論(traits theory) の問題について詳しくは,人格心理学や性格心理学の成書にゆずるが,それらに限らず検査者・臨床 家がどのような全体的な人格理論,人間に対する見方をもっているのかということが重要である。個 々の情報はそのような理論や見方によって意味づけられるからである。また,用いようとするそれぞ れの検査は人格のどのような側面を捉えようとしているのかについてもよく理解しておく必要が ある。 心理臨床においては,実践上の要請からきわめて具体的に,診断や病態水準,心理的援助の可能性, 治療方針や技法,等々を明らかにすることが検査実施の目的となることが多いが,このような何のため に実施するのかという,その時どきの目的や目標をはっきりさせておかなければならない。 心理検査の実施にあたって,このほかにもいくつか前提になることがある。なかでももっとも重要な 前提となるのは,検査の実施は「被検査者の福祉のためにのみなされなければならない」ということで ある。被検査者にとって,検査を行うことが行わない場合よりも明らかに利点が多いと判断される場合 にのみ実施されるべきであり,目前のこの被検査者にとって必要なときには実施し,そうでないときに はすべきではないということである。この実施する・しないの判断,するなら何をいつするか等の判断 は,心理臨床家の専門性と主体性に任されるべきものである。 これらの事がらは心理臨床家の責任性および倫理性の主題とかかわっている。すなわち実施する検査 が何を狙いとしてどのように構成されているのか,結果はどのような基準でいかなる意味をもつのか, 限界や問題点,実施することの影響,等々に関して心理臨床家は知りつくし,実施法についても十分に 習熟していなければならないし,また,被検査者のプライバシー保護と守秘義務に留意すること,いわ ゆるインフォームド・コンセント(「十分な説明による同意」)および「拒否する権利」を尊重すること 等も守らなければならない(池田豊應 1995 心理テストによるアセスメント 野島一彦(編) 臨床心 理学への招待 ミネルヴァ書房)。 |
||||||||||
※パーソナリティ(性格)検査は,それぞれが,特有の性格理論に基づいて作成され ており,その理論によって性格を理解しようとする。したがって,ある理論的立場か らの性格理解は可能であるが,それはあくまでも全人格の一側面にすぎない。また, 性格検査は,個人の内的世界を明らかにするものであり,場合によっては結果を伝え た被検者(検査を受けた人)に心理的外傷をもたらすこともありうるので,実施に際 しては,検査の目的や実施方法に習熟した上で,誤用・乱用やプライバシーの侵害な どの倫理的問題に慎重に配慮する必要がある。 |
||||||||||
2.カウンセリングとは? |
||||||||||
言語的および非言語的コミュニケーションを通して,行動変容を試みる人間関係。面接室でのやりとりが主になる。 (『カウンセリング辞典』誠信書房) ※カウンセリングと相談は違う。カウンセリングは,傾聴・受容・共感的理解が基調となる。相談は,アドバイス, 助言が主となる。 ※信頼感・安心感を抱く温かい心の交流 ※面接室は,安心感の基地。 ※クライエントは,決められた日時,決められた場所に定期的に通うことによっ て(決められた時間,カウンセリングを受ける。同じカウンセラー。),自ら人格 変容を図り,適応行動を身につける。カウンセラーはそのための援助者。一時的 な援助者。 ※カウンセラーは,まず,クライエントとの間にラポール(ラポート)をとる。 ◎ラポール:カウンセリングなどで,面接者と面接対象者との間につくる親和的・共感的関係。(『広辞苑』より) ※原則として,他の場所でのやりとりはしない。(電話,手紙,メールなど) ※クライエントが適応行動を身につけ,人間関係支援網ができていることが確認 されたとき,カウンセリングは終了する。 |
||||||||||
☆カウンセラーのクライエントにたいする基本的姿勢 |
||||||||||
@傾聴 A受容 B共感的理解 ※共感的理解を示す ※無条件の肯定的理解を示す ※傾聴→擬似体験→感情移入→感情移入的理解を示す |
||||||||||
☆カウンセラーの条件 |
||||||||||
・自己一致 ・受容 ・共感 |
||||||||||
☆カウンセリングの技法 |
||||||||||
@傾聴 ※事実を正確に聞く聴く ※聴く・傾聴→擬似体験→感情移入 Aうなづき Bオウム返し(くりかえし) ※鏡→反射→自己洞察・自己理解 C言い換え D明確化 E要約 ※その他「質問・観察・支持・はげまし・・感情の反映・説得・対決・焦点のあ て方・意味の反映・指示・論理的帰結・解釈・自己開示・助言・情報提供・説明 ・教示・フィードバック・積極的要約・技法の統合」などがある。 |
||||||||||
☆カウンセリングマインドとは? |
||||||||||
「スキンシップ」と同じように,日本人が作った和製英語。学術用語ではない。 「カウンセリングの心」「カウンセリングの精神」「カウンセリングを行うとき のような心」という意味で広く使われている。相手の気持ちを,相手の身になって 感じることであり,相手と気持ちの通じ合う人間関係を大切にする基本的な態度 ・技能をさす。日本のカウンセリングは,プロのカウンセラーだけの専有領域ではな く,教育,マネジメント,結婚,家庭,育児,社交,集団,コミュニティ,ボランティ アなどに広く活用しようという気運の中で自然発生した言葉。 |
||||||||||
☆ロールプレイ(役割演技) |
||||||||||
※時間は1分間 ※観察者は,ポジティブフィードバックで講評する。 ・先生役:津村T ・子ども役:夏目T ・観察者:全員 @ 傾聴:事実を正確に聞く A うなづき B オウム返し(くりかえし)・機械的オウム返し ・情感を込めたオウム返し・感嘆符をつけた(!びっくりマーク)オウム返し ・笑顔のオウム返し C 気がかりな行動,困った行動の場面でカウンセリングマインドを活かす |
||||||||||
3.フリートーキング(エンカウンター・グループ) |
||||||||||
◎ファシリテーター(促進役):津村T ◎Coファシリテーター:夏目T |
||||||||||
☆エンカウンター・グループ(encounter group)とは… |
||||||||||
エンカウンター・グループ(encounter group)は,集団グループ経験(intensive group experience) に含まれ,クライエント中心療法(来談者中心療法)を創始したロジャーズ(Rogers, C. R.)によって 始められた。「エンカウンター(encounter)」とは,通常,「出会い」と訳すが,参加者が10人前後の 小さな集団を構成し,相互の自由な関わり合いを通じて,自己理解や他者理解を深め,お互いの人間 的成長を促しあう,というものである。この集団には,ファシリテーター(facilitator:促進者)と呼 ばれる心理学者がつき,このプロセスを側面から援助していく。 エンカウンター・グループでは,まったくプログラムの内容が決まっていない。何のテーマも設定さ れない。すべてのプロセスが参加者ひとりひとりの自発性と主体性によって進められていくのである。 通常,私たちが「集団」を形成するときには,一定の目的と役割があり,目的を達成するためにお互い にどのような役割を果たせばよいか,比較的はっきりしている。だが,「すべてはひとりひとりの自発 性と主体性によって」という状況に投げ込まれると,人はどう行動してよいかわからない。しかし,目 的や役割が決められていないからこそ,そこで人は日常のしがらみを離れ,通常の人間関係におけるよ りもはるかに直接的に,かつ率直に関わり合えることになる。ファシリテーターは,そのような関わり を通じて,参加者が日常の人間関係では得がたい"気づき"を得られるよう援助する。 通常,1セッションは2〜3時間,1日2〜3セッション行い,1泊2日から5泊6日の「合宿形式」 から,「通い」の形式まで,形態はさまざまである。日本でも,1960年代から70年代に盛んに行われ た。 この集中的グループ経験の実習は,ロジャーズが指摘しているように,自我防衛や見せかけの自分を 取り去って,その後の日常生活で他者との間に好ましい人間関係が生まれることを期待して行われる わけであり,個人的態度や行動を変容させる上で効果がある。 |
||||||||||
〜来談者中心カウンセリング(来談者中心療法orクライエント中心療法)について〜 |
||||||||||
基本的な考え方 |
||||||||||
ロジャーズ(Rogers, C. R.)が創始した来談者中心カウンセリングは,どのような人も成長する潜在的能力がある という人間観を持っている。 クライエントは,自分で体験していること(体験過程)と自分の体験について理解していること(自己概念)が一致 しないために,さまざまな困難な状態にあると考える。 多くの人は,自分で体験していることを自分で分からないはずはないと考えるかもしれない。けれども,そのような 現象は日常でもよく見られる。たとえば,友だちのところに行って「一緒に,サッカーやろう。」と誘い,「今はできな いよ。」と断られた場合を考えよう。その時に感じた体験は「断れて,がっかりした」ことであるにも拘わらず,自分の ことを「嫌われた」と感じることがある。また,それまでトップクラスだった成績が,ある時の試験では42点しか取 れず,「最悪だ。もうだめだ。」と考えてしまうのも,正確に自分のことを理解しているとはいえない。「ある試験の成績 が42点だった」のであって,「最悪」で「もうだめだ」というわけではない。 このようにクライエントは自分の体験を見失っている面があるが,一方で,来談者中心カウンセリングでは,クライ エントがどのような経験をしていて,どのような問題をかかえ,どの方向に行くべきか,それを知ることができるのも クライエント自身であると考える。したがって,カウンセリングでは,相手の問題点を指摘したり,解決策をアドバイ スしたりするよりも,相手の話をひたすら聴いて「傾聴」することが重要とされる。傾聴するということは,耳で相 手の話を聞いているだけではない。相手の話を聴くカウンセラーの姿勢や,うなずきやあいづちをうつなどの態度によ っても,クライエントが「聴いてもらえている」と感じられるようにすることが大切である。 |
||||||||||
〔引用文献〕 |
||||||||||
平山 諭・早坂方志(編)2003 発達心理学の基礎と臨床 第3巻 発達の臨床からみた心の教育相談 ミネルヴァ書房 久能 徹・松本桂樹(監修)2000 図解雑学心理学入門 ナツメ社 中山 巖(編)2001 学校教育相談心理学 北大路書房 |