算数教育に期待
| −教師に感動を − |
| 小川 弘 |
| 学校教育において目指す人間像が「自ら考え正しく判断できる」から「自ら学ぶ意欲をもち社会の変化に主体的に対応できる豊かな心をもちたくましく生きる」へと高まり、今また 「生きる力」を育てることを基本として考えられている。この恨本は個性尊重であり、個性伸張を目的とし、個性に則して指導するよう方向づけるものである。それはまた選択の自主性による選択の多様化をもたらしていき、斉一を拒むものである。これらを成立させていくためには自己責任の態度や能力を培っていくことが求められるであろう。 そのための初等教育の基本は、子どもたちが無心になって取組むことを経験し、そこに喜びを見出し楽しいと感ずることにある。そして自らも努力し友人と共に考え話すことを通して共感や感動を味わうことにより、生きることの意義を体得するとともに、多様な「人のよさ・すばらしさ」に気付き、真の友人と連帯していけるようになっていくことが求められる。 算数教育は第一に、昭和10年「数理思想の開発」が説かれ、同33年「より進んだ数学的な考え方や処理のしかた」および算数教育で目指す「価値の内容」が提示され、同43年その内容がより明確・端的に示され、ようやく質的な意味で算術から算数への脱皮ができたと言える。「統合発展的に考察し、知的な論理性を育てる」ことが目標であるとはっきりした。 第二に、平成元年「よさが分かる」を要点とし情緒の重要性を指導要領で初めて示し、画期的なことであった。冷たい・解けて当然という理知の開発も温かい情緒抜きには成り立たぬことをはっきり提示したのである。得心・共感は頭と心の両方揃ってはじめて成立するものである。旦つそのため「自ら考える場……」と指導上の配慮まで指摘した。 第三に、以上のことから指導における教師の役割は「支援」となり、子どもは自由な活動を時間をかけてじっくりやるよう方向づけられた。まさに授業の質的転換が求められた。 他方 学校現場の指導では早くから「子のつぶやき・表情・反応をみて、子にやらせよ、子に学べ、子の視線で、子に時間をやれ、発問のことばと間を考えよ、子の視線で、子の側に立って、一方的に評価ずるな……」等現場で生まれた教育文化財と呼ぶべき貴重な実践の積み上げから生まれた指針が沢山あり、これらは教員の宝である。 以上述べてきたことが算数指導上の基本的重要事項であることは、今後も変わらないであろう。実際の授業でそれらを生かす根本として最も意を用いてほしいのは「教師の感動」である。子の取組をよく見、よく聞く時そのすばらしさに感銘を受けることがよくある。それを子に訴えてほしい。それを積み重ねていく中に子自身が感動を自ら表せるようになる。 立式・答え・図示等ができ「ハイ よろしい 終わり 次」では子の心を揺り動かせない。よさを秘めている子の取組の姿こそ創造的営みであり、それの分かる感性を育てたい。 近年授業時数減や適時性の名のもとにスパイラル方式が切捨てられ集中的扱いになっている。素地・前段扱いには「育てる」上で重要な事柄が含まれていた。大切な点には十分時間をかけてじっくり行い、育てようという気持ちで授業に臨むことが大事である。 学習内容を2分野とし、Aは技能習熟―計算・測定・作図−とし特定の技能の習熟を図り、Bは問題解決の探究学習でじっくり時間をかけ創造的に展開し算数の中心としてはどうか。 |