郷土資料室(3)


孔雀(くじゃく)の糸

 平成13年2月の朝会の講話から(要旨)

 今日は,私たちの町,室町で昔から盛んに行われてきた仕事、西陣織のことをお話します。

 西陣織は、日本だけではなく、世界にも誇れる西陣の伝統産業です。西陣織は、もう500年以上も続いている織物の仕事です。皆さんのお家でも織物の仕事をしているところもあると思います。また、近所で機織の音を聞くこともあると思います。
 西陣織のはじめは、応仁の乱が終わったことから始まったといわれています。室町校では、郷土資料室に、西陣織のはたおり機がおいてありますし、地域の森本さんに、機織をおしえていただいている人もいますから、よく知っているひともいますね。

 最近、先生が驚いたことがあります。それは、これまで西陣織を伝えてきた人々の工夫です。
 その一つを紹介しましょう。

 これは何だと思いますか。これは、中国から輸入したクジャクの羽根です。とても美しい色をした羽根です。

 どこから持ってきたかというと、先日、室町学区にある西陣織の工場が閉鎖されるということを聞いて、その工場を見せてもらいに行きました。 工場の中にはたくさんの織機や織物の材料がありました。その中に、たくさんのクジャクの羽根が、ダンボールの箱に入れられて積んでありました。その数は、何万本もあったと思います。
 その時、なぜ西陣織の工場にクジャクの羽根があるのかなと不思議に思いました。

 皆さんは、これは何に使うと思いますか。
 先生は、すぐにはわかりませんでした。
 そこで、森本さんに聞いてみました。

 このクジャクの羽根を、糸にして織物を織るととても美しい織物ができるそうです。

 この説明を聞いた時に、「鶴の恩がえし」という物語をおもいだしました。皆さんも知っている人も多いと思います。
 このお話では、一羽の傷ついた鶴が、人間に助けてもらったお礼に自分の羽根で織物を織るという話です。「鶴の恩返し」というお話では鶴の羽根でした。
 
そこで初めて、高級な西陣織の中には、クジャクの羽根を使っておるものもあることを初めてしりました。

 それでは、どのようにして鶴の羽根やクジャクの羽根を織物にするのかなと新しい疑問がでてきました。実は、この疑問は、初めて「鶴の恩返し」を読んだ時からの長い間の疑問でした。

 そこでまた、森本さんに質問しました。
 「どのようにして、糸にするのですか。」
 すると、森本さんは、実際に糸を持ってこられて詳しく説明をしてくださいました。

 細い糸を何本もより合わせる時に、その糸の間に、クジャクの羽根を細かくしたものを一緒によりこんでいくのだそうです。
 クジャクの糸をよくみると、クジャクの羽根が
糸の間にはさまれているのがよくわかります。
 このようにして美しいクジャクの糸を作るのです。
 つぎに、この糸を横糸にして織物を織っていくのです。

 昔の人たちが、他の人よりももっと美しい織物をおりたいと工夫して、何度も失敗しながら、このように素晴らしい技術を発明してきたことは本当にすごいなと感心をしました。

 今の室町でも、このように、いろいろな工夫をして、伝統の仕事を守っている人たちがいるのだなと思い、たいへん感動しました。

 また、工場の中には、箱に詰まった何千匹,いや,何万匹の玉虫もみました。背中が緑色や瑠璃色をしたとても美しい昆虫です。この虫も織物に使うのだと聞いて2度びっくりしました。

 ここに、ある糸が、クジャクの羽でできた糸です。 あとで学級に回しますので興味のある人はよくみてください。

 平成13年2月5日の朝会での校長講話